一 余罪を認定した趣旨ではないとして違憲の主張が欠前提とされた事例 二 判例違反の主張が欠前提とされた事例
判旨
判決書において犯行に至る経緯として記載された事実は、特段の事情がない限り余罪として認定されたものとは解されず、また共謀成立前の一過程における心的状態の指摘は、共謀の内容そのものとは区別される。
問題の所在(論点)
判決文中に犯行の経緯として記載された事実が、適正手続きに反する「余罪の認定」にあたるか。また、共謀形成過程の心的状態の記載が「共謀の内容」の認定として不当ではないか。
規範
判決書に記載された事実が「余罪」にあたるか否かは、それが犯行に至る経緯の一環として記載されたものか、独立した犯罪事実として認定されたものかによって判断される。また、共謀の認定においては、具体的な共謀の内容そのものと、その形成過程における被告人らの心的状態とを峻別すべきである。
重要事実
被告人らが共謀の上で犯罪行為に及んだとされる事案において、第一審判決が犯行に至るまでの経緯や、その過程における被告人らの心理的な推移について判決文中で言及した。これに対し、弁護人側は、当該記載が起訴されていない「余罪」を認定したものであり、また共謀の内容に関する判例に違反するものであるとして上告した。
あてはめ
第一審判決の指摘した事実は、あくまで「犯行に至る経緯の一環」として記載されたに過ぎず、独立した犯罪事実(余罪)として認定されたものではないことは判文上明らかである。さらに、指摘された部分は「各犯罪行為に関する共謀の内容」そのものではなく、共謀が形成される過程における「被告人らの心的状態」を示したものに他ならないため、共謀認定に関する法理に抵触しない。
結論
事件番号: 昭和30(あ)434 / 裁判年月日: 昭和30年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の供述が強制や拷問によるものであるという主張について、これを認めるべき証拠がない場合には、憲法違反等の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、原審における証人または被告人の供述が強制や拷問によって得られたものであると主張し、憲法違反を理由に上告を申し立てた事案である…
本件各事実は余罪の認定にはあたらず、また共謀の内容の認定に誤りもないため、憲法違反および判例違反の主張には理由がない。
実務上の射程
量刑の基礎となる情状事実として「犯行の経緯」を記載する際、それが余罪の処罰的評価に至らない範囲であれば適法であることを示唆する。答案上は、共謀の成立を論じる際に、具体的な合意内容と心理的経過を区別して整理する際の参考となる。
事件番号: 昭和34(あ)123 / 裁判年月日: 昭和37年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立には自ら実行の任に当たることは不要であり、また共犯者の供述は被告人自身の自白(憲法38条3項)には含まれず、補強証拠なしに有罪認定の証拠とすることができる。 第1 事案の概要:被告人らは、多数で駐車場に侵入し、自動車に対して石や火炎瓶を投げて破壊することを協議決定(共謀)した。こ…
事件番号: 昭和61(あ)1311 / 裁判年月日: 平成3年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】争議行為等の労働組合活動が正当性を有し違法性を欠くというためには、その動機や目的のいかんにかかわらず、態様が社会通念上許容される限度を超えないものでなければならない。 第1 事案の概要:被告人らは労働組合活動の一環として何らかの行為(具体的な実行行為の内容は判決文からは不明)に及んだが、その態様が…
事件番号: 昭和40(あ)1955 / 裁判年月日: 昭和41年4月14日 / 結論: 棄却
憲法第二八条は、勤労者の団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障しているが、勤労者の争議権の無制限な行使を許容したものではなく、勤労者の右団体行動権と一般国民の基本的人権との調和を破らない範囲において勤労者の労働条件の維持改善等に必要且つ正当な限度においてのみこれを行使することを保障したものであることは、当裁判所の判…
事件番号: 昭和56(あ)1662 / 裁判年月日: 昭和57年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立において、共謀の内容が具体的かつ詳細に判示されていることは必ずしも必要ではなく、犯罪の実行を合意したといえる程度の判示があれば足りる。 第1 事案の概要:被告人らは、多衆の威力を用いて犯罪を実行したとして起訴された事案において、共謀の事実認定に具体性が欠けるとして判例違反を主張し…