一 判例違反の主張が、実質は事実誤認、単なる法令違反の主張された事例 二 判例違反の主張が、前提を欠くとされた事例 三 引用の判例が刑訴法四〇五条二号、三号にいう判例にあたらないとされた事例
刑訴法405条2号,刑訴法405条3号
判旨
共謀共同正犯の成立において、共謀の内容が具体的かつ詳細に判示されていることは必ずしも必要ではなく、犯罪の実行を合意したといえる程度の判示があれば足りる。
問題の所在(論点)
共謀共同正犯の成立要件としての「共謀」の認定において、判決書にどの程度の具体性をもって共謀の事実を記載(判示)する必要があるか。
規範
共謀共同正犯における共謀の成否については、数人が特定の犯罪を行うことを合意したことが認められれば足り、その共謀の態様や内容(日時・場所・方法等)が極めて詳細かつ具体的に判示されていることまでを要するものではない。
重要事実
被告人らは、多衆の威力を用いて犯罪を実行したとして起訴された事案において、共謀の事実認定に具体性が欠けるとして判例違反を主張した。具体的には、先行する大法廷判決が共謀の判示につき具体的な記述を求めていると解釈し、本件の判示が不十分であると争った。
あてはめ
被告人側は、過去の大法廷判決を根拠に、共謀の内容を詳細に判示せねばならないと主張する。しかし、当該判例は共謀の判示について所論のような具体的詳細さを必須としているわけではない。したがって、原判決において共謀の事実が認定されている以上、その具体性が不十分であるとの主張は、前提を欠く事実誤認の主張にすぎない。
事件番号: 昭和42(あ)1053 / 裁判年月日: 昭和42年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合の行為であっても、暴力の行使に出ることは正当な団結権の行使とは認められず、労働組合法1条2項の刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合活動の一環として本件行為に及んだが、その態様は暴力の行使を伴うものであった。被告人らは、憲法28条が保障する団結権等に基づく正当な…
結論
共謀の事実は、犯罪の合意があったと認められる程度の判示があれば足り、詳細な具体性がないことをもって直ちに違法とはならない。
実務上の射程
共謀共同正犯の事実認定において、実行行為への関与が間接的な共犯者であっても、包括的な合意が認められれば、実行行為の細部(いつ、どこで、誰が、何を等)まで確定・判示せずとも有罪認定が可能であることを示す。実務上は、共謀の存在を推認させる間接事実の積み上げで足りるという立証・認定の許容範囲を画したものである。
事件番号: 昭和29(あ)1056 / 裁判年月日: 昭和33年5月28日 / 結論: 棄却
一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない 二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しな…
事件番号: 昭和46(あ)451 / 裁判年月日: 昭和46年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立要件と憲法第31条の関係 第1 事案の概要:本件において、上告人(被告人)らは、いわゆる共謀共同正犯としての刑責を問われた。弁護側は、直接実行行為に関与していない者に対して共同正犯の責任を負わせることは、罪刑法定主義ないし適正手続を定めた憲法31条に違反すると主張して上告した。 …
事件番号: 昭和42(あ)3025 / 裁判年月日: 昭和43年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者のうち一部が起訴されず、またはより軽く処罰されたとしても、特定の被告人のみが起訴され、あるいは重く処罰されることは、直ちに憲法14条の法の下の平等に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人は共犯事件に関与したが、他の共犯者は起訴を免れ、あるいは被告人よりも軽い処罰を受けるにとどまった。…
事件番号: 昭和27(あ)770 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が複数人で共同して暴行を加えた行為について、それが強制わいせつ罪の構成要件の一部をなすものではなく、単なる暴行に止まる場合には、強制わいせつ罪ではなく暴行罪(又は共同正犯)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が数人と共同して暴行をなした事実が認められたが、弁護人はこれが刑法176条(当時の…