判旨
共謀共同正犯の成立要件と憲法第31条の関係
問題の所在(論点)
実行行為に直接関与していない共謀者に対し、刑法60条を適用して共同正犯の刑責を負わせることは、憲法31条に違反するか。
規範
刑法60条にいう「共同して犯罪を実行した」とは、実行行為を分担する場合に限らず、特定の犯罪を行うために共同の意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、自己の犯罪として実行する合意(共謀)が存在し、その一部の者が当該共謀に基づき実行行為に及んだ場合をも含む。このような共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者に共同正犯の刑責を負わせても、憲法31条(適正手続の保障)に違反しない。
重要事実
本件において、上告人(被告人)らは、いわゆる共謀共同正犯としての刑責を問われた。弁護側は、直接実行行為に関与していない者に対して共同正犯の責任を負わせることは、罪刑法定主義ないし適正手続を定めた憲法31条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
判旨によれば、共謀共同正犯が成立するために必要な「共謀に参加した事実」が証拠上認められる。共謀共同正犯は、共謀者が互いに他人の行為を自己の手段として利用し、犯罪を実現する関係にあることから正犯性が認められるものである。したがって、物理的な実行行為への着手の有無にかかわらず、正犯としての責任を問うことは法の予定するところであり、憲法31条が要求する適正な手続や実体的適正を欠くものとはいえない。本件においても、適法に認定された共謀の事実がある以上、実行行為の分担がないことをもって違憲とすることはできない。
結論
直接実行行為に関与しない共謀者であっても、共謀の事実が認められる限り、共同正犯の刑責を負わせることは憲法31条に違反しない。
実務上の射程
事件番号: 昭和43(あ)1470 / 裁判年月日: 昭和44年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者であっても刑法60条の共同正犯としての責任を負い、これは憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、特定の犯罪に関する共謀に加担した。共謀に基づき一部の者が実行行為を行ったが、被告人ら自身…
共謀共同正犯の成立を認めた昭和33年5月28日大法廷判決を再確認し、実務上定着した共謀共同正犯の理論が憲法に適合することを簡潔に示したものである。
事件番号: 昭和29(あ)1056 / 裁判年月日: 昭和33年5月28日 / 結論: 棄却
一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない 二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しな…
事件番号: 昭和46(あ)1190 / 裁判年月日: 昭和47年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単独正犯として起訴された事案について、訴因変更の手続を経ることなく共同正犯として認定することは、判決が訴因と異なる事実を認定したものではない場合には許容される。 第1 事案の概要:被告人は単独正犯の訴因により起訴された。原審(控訴審)は、被告人の行為について、訴因変更の手続を経ることなく事実認定を…
事件番号: 昭和56(あ)1662 / 裁判年月日: 昭和57年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立において、共謀の内容が具体的かつ詳細に判示されていることは必ずしも必要ではなく、犯罪の実行を合意したといえる程度の判示があれば足りる。 第1 事案の概要:被告人らは、多衆の威力を用いて犯罪を実行したとして起訴された事案において、共謀の事実認定に具体性が欠けるとして判例違反を主張し…