一 本件警察職員の出動が小樽市条例違反による無許可集会の取締のためのみを目的としたものではなく、他面暴行犯人捜査のためであること明らかな本件において、被告人等の右職員に対する公務執行妨害罪の成立は、右小樽市条例が違憲であつて、その犯情に影響あると否とにかかわりなく、これを否定することはできない。 二 裁判官の面前における供述調書は、刑訴第三二一条第一項第一号の、検察官の面前における供述調書は、同第二号の各条件を具備する限り、その各供述者が公判準備もしくは公判期日において証人として供述する際、その供述の任意性を疑わしめる等の情況の存すると否とにかかわずひとしくこれを証拠となし得る。
一 公務執行妨害罪の成立する事例 二 刑訴法第三二一条第一項第一号第二号の書面の証拠能力と供述者の公判期日等における供述の任意性
刑法95条1項,昭和25年12月18日小樽市条例70号,刑訴法321条1項1号,刑訴法321条1項2号
判旨
共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移す内容の謀議をなせば足りる。また、共同被告人の供述は、自己の犯罪事実に関する「本人の自白」には当たらないため、独立の証明力を有し、補強証拠なしに他の被告人の有罪認定の証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
1.直接実行行為に関与していない者に共謀共同正犯の刑責を負わせることは、憲法31条(適正手続)に反しないか。2.共同被告人の自白を、他の被告人の犯罪事実を認定する唯一の証拠とすることは、憲法38条3項(自白の補強証拠)に違反しないか。
規範
1.刑法60条の共謀共同正犯は、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、これに基づいて犯罪が実行された場合に成立する。2.憲法38条3項にいう「本人の自白」とは、被告人自身の供述を指し、共同被告人の供述はこれに含まれない。したがって、他の被告人の供述は、独立した証拠能力および証明力を有する。
重要事実
被告人らは、小樽市における無許可集会の取締りおよび記者に対する暴行犯人の捜査のために出動した警察職員らに対し、暴行・脅迫を加えて公務の執行を妨害したとして起訴された。被告人らの中には直接の実行行為に加担していない者も含まれていたほか、有罪認定の証拠として共同被告人の自白が用いられた。また、前提となる小樽市条例の違憲性が争点となった。
あてはめ
1.共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者であっても、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったといえる。本件においても、特定の公務執行妨害を行う共同意思の下に謀議がなされた以上、共謀共同正犯の成立は憲法31条に違反しない。2.共同審理を受けているか否かを問わず、共犯者の供述は被告人本人との関係では「被告人以外の者の供述」である。したがって、被告人自身の自白と同一視する必要はなく、憲法38条3項の制限を受けずに独立した証明力を有すると解される。
結論
1.直接実行行為に関与しない者であっても、共謀に基づき実行された行為については共同正犯としての刑責を負う。2.共同被告人の自白は「本人の自白」に当たらないため、これを証拠として他の被告人を死刑又は懲役等に処することは憲法に違反しない。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件を明示した基本判例。実行行為への分担が不明確な組織的犯罪において、謀議への関与を立証することで正犯性を基礎づける際に用いる。また、証拠法上、共犯者の自白に補強証拠が不要であることを示す際にも必須の判例である。
事件番号: 昭和34(あ)1303 / 裁判年月日: 昭和34年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務執行妨害罪における職務の適法性は、上級公務員の命令を受けた補助公務員が、その命令の意図や実質的な適否に関わらず、自己の職務権限の範囲内で当該命令を執行する限り、原則として肯定される。 第1 事案の概要:大阪刑務所の第三区長Bは、受刑者である被告人に対し、監獄法施行規則に基づき所長代理として諭告…
事件番号: 昭和43(あ)1470 / 裁判年月日: 昭和44年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者であっても刑法60条の共同正犯としての責任を負い、これは憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、特定の犯罪に関する共謀に加担した。共謀に基づき一部の者が実行行為を行ったが、被告人ら自身…
事件番号: 昭和30(あ)3951 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
刑法九五条は公務員を特別に保護する規定ではなく、公務員によつて執行される公務を保護するものであるから、論旨は同条の保護法益に関する誤つた見解に立つものであつて、違憲の主張はその前提を欠くものである。(最高裁判所判例集七巻一〇号一八八三頁参照)