刑法九五条は公務員を特別に保護する規定ではなく、公務員によつて執行される公務を保護するものであるから、論旨は同条の保護法益に関する誤つた見解に立つものであつて、違憲の主張はその前提を欠くものである。(最高裁判所判例集七巻一〇号一八八三頁参照)
公務執行妨害罪の保護法益
刑法95条,憲法14条
判旨
刑法95条(公務執行妨害罪)の保護法益は、個々の公務員自身の身体や自由という個人的利益ではなく、公務員によって執行される公務そのものの円滑な遂行という国家的利益である。
問題の所在(論点)
刑法95条1項の公務執行妨害罪の保護法益は何か。特に、特定の身分を持つ公務員個人を不当に保護する目的を持つ規定か否かが問題となる。
規範
刑法95条は、公務員を特別に保護する規定ではなく、公務員によって執行される公務を保護するものである。
重要事実
被告人が公務員に対し暴行又は脅迫を加えたとして、刑法95条1項の公務執行妨害罪に問われた事案。弁護人は、同条が公務員を不当に特別視して保護するものであり、法の下の平等に反し違憲である旨を主張して上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和38(あ)1203 / 裁判年月日: 昭和39年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法95条の公務執行妨害罪は、公務員個人を特別に保護するものではなく、公務員によって執行される公務そのものを保護法益とするものである。 第1 事案の概要:被告人らは、公務員の職務執行に際して暴行または脅迫を加えたとして、公務執行妨害罪等の刑責を問われた。これに対し弁護側は、同罪が公務員を不当に優遇…
同条が公務員という「人」に着目しているのは、その者が現に「公務を執行」しているからに他ならない。したがって、同条の目的は特定の身分を有する個人を特別に保護することにあるのではなく、その者が担当する「公務」の適正かつ円滑な執行を確保することにあると解される。本件において、公務員個人を特別視して保護しているとの主張は、同条の保護法益に関する誤った理解に基づくものである。
結論
刑法95条1項の保護法益は公務そのものであり、公務員個人を特別に保護する規定ではないため、憲法に違反しない。
実務上の射程
公務執行妨害罪の保護法益を国家的法益(公務の円滑な遂行)と確定させたリーディングケースである。答案上は、職務の執行が「適法」である必要があることの根拠(適法でない公務は保護に値しない)として、この保護法益論を援用する形で活用する。
事件番号: 昭和28(あ)2695 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法95条1項の公務執行妨害罪における「暴行」は、公務員に対し直接加えられるものであることを要せず、公務員に向けられた有形力の行使であれば間接的であっても同罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人らは、公務員の職務執行に際し暴行を及ぼしたとして公務執行妨害罪等で起訴された。弁護人は、当該暴行が公務…