一 被告人所論の起訴状公訴事実冒頭記載についての原判断も相当である。 二 註、原判決の要旨 本件起訴状公訴事実の冒頭に被告人は昭和三二年八月八日千葉刑務所を出所後と記載のあること、そしてこれが本件殺人の訴因外の事実であることは所論のとおりである。しかしこの程度の被告人の経歴に関する事実の記載があるからと云つて裁判官に格別予断を抱かせるものとは認められないのみならずこの事実は被告人と被害者との関連を明瞭にするものである。本件起訴状は刑訴二五六条の規定に違反するものではない。
刑訴法第二五六条第六項に違反しない事例
刑訴法256条6項
判旨
起訴状に公訴事実の冒頭として前科や経歴を記載することは、被告人の特定や余罪の背景説明として許容され、直ちに起訴状一本主義(刑訴法256条6項)に反するものではない。
問題の所在(論点)
起訴状の公訴事実冒頭に被告人の前科や経歴を記載することが、裁判官に事件に対する予断を生じさせ、刑訴法256条6項が禁じる「裁判官に予断を生じさせるおそれのある書類その他の物の添付・引用」に準ずる違法(起訴状一本主義違反)となるか。
規範
起訴状に公訴事実と直接関係のない前科や経歴が記載されていたとしても、それが被告人の特定に資する場合や、犯行の動機・背景を説明するために必要最小限の範囲であれば、裁判官に予断を生じさせる不当な記載とは言えず、刑訴法256条6項(起訴状一本主義)に違反しない。
重要事実
被告人が刑事事件で起訴された際、検察官が作成した起訴状の公訴事実冒頭部分に、被告人の前科や経歴に関する記載がなされていた。被告人側は、このような記載は裁判官に予断を生じさせるものであり、起訴状一本主義に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件における起訴状の公訴事実冒頭記載について、原審の判断は相当である。記録によれば、当該記載は被告人の特定や事件の経緯を説明する範囲にとどまっており、裁判官に不当な偏見を抱かせる性質のものとは認められない。また、被告人自身が供述調書の証拠採用に同意している事情等も鑑みれば、手続上の違法があるとはいえない。
結論
起訴状の冒頭記載に前科等の記載があっても、それが不当に予断を生じさせるものでない限り、起訴状一本主義に反せず適法である。
実務上の射程
起訴状一本主義(256条6項)の限界に関する判断。実務上、被告人の素行や前科を「犯行の動機」や「経歴」として冒頭記載に含めることは、それが余罪の立証を目的とした過剰なものでない限り許容される。答案では、記載が「被告人の特定」や「犯行の背景説明」として必要性があるかを検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和26(あ)1474 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
一 起訴状冒頭に「被告人は博徒の親分である」旨の被告人の経歴を示すことは、裁判官に予断を生ぜしめるおそれある事項の記載にあたらない。 二 所論伝聞にわたる点は、原判決説示のごとく記録に照しその供述中如何なる部分が伝聞にわたるかを判断するに難くはないから、起訴法違反も認められない。註。証拠の標目を掲げるに当り(各伝聞にわ…
事件番号: 昭和57(あ)1505 / 裁判年月日: 昭和58年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による冒頭陳述の内容が不相当であっても、直ちに判決に影響を及ぼすべき法令違反となるわけではない。 第1 事案の概要:被告人が自白の任意性や補強証拠の存否、量刑不当等を理由に上告した事案。弁護人は、検察官の冒頭陳述の中に不適切な部分があり、また原判決が余罪を処罰する趣旨で量刑を行ったことが判例…