判旨
法律の廃止に際し、附則で施行前の行為につき従前の例により罰則を適用すると規定することは、法の文理上明らかであり憲法39条に違反しない。また、同条にいう「既に無罪とされた行為」とは「既に無罪の裁判のあった行為」を指す。
問題の所在(論点)
法律の廃止後に、その廃止前の行為を旧法の罰則により処罰することが憲法39条(遡及処罰の禁止・一事不再理)に抵触するか。また、同条の「既に無罪とされた行為」の意義が問題となる。
規範
1. 法律が廃止される際、附則において「施行前に行われた行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定を置くことは可能であり、文理解釈上、旧法下の行為を処罰する趣旨である。2. 憲法39条前段の「既に無罪とされた行為」とは、「既に無罪の裁判のあった行為」を意味する。
重要事実
被告人は、旧法である「貸金業等の取締に関する法律」に違反する行為を行った。その後、新たに「出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律」が制定され、旧法は廃止された。新法の附則には、廃止前の行為に対して旧法の罰則を適用する旨の経過規定が置かれていたが、被告人はこのような処罰は憲法39条に反するなどと主張して上告した。
あてはめ
本件新法は、附則において旧法の廃止を規定すると同時に、施行前の行為についてはなお従前の例による旨を明示している。これは文理上、旧法違反行為を依然として処罰する趣旨であることが明白であり、拡張解釈には当たらない。また、被告人の行為について過去に無罪の裁判があった事実は存在しないため、憲法39条が禁じる「既に無罪とされた行為」を再び処罰すること(一事不再理)の前提も欠いている。
結論
被告人の行為を旧法の罰則に基づき処罰することは、憲法39条に違反せず適法である。
事件番号: 昭和27(あ)159 / 裁判年月日: 昭和30年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一事件における第一審と控訴審の手続は、継続する一つの『危険』の各部分にすぎないため、控訴審が自判しても憲法39条後段の二重処罰禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が貸金業等の取締に関する法律違反(無届け貸金業)に問われた事案。第一審判決は懲役1年(執行猶予3年)及び罰金10万円の有罪判…
実務上の射程
法令の改廃に伴う経過規定の合憲性を基礎づける判例である。特に憲法39条の「無罪」の定義について、実質的な無罪性ではなく「無罪の裁判」という手続的確定を指すことを明示した点に意義がある。答案上では、法令変更時の処罰の可否や一事不再理の範囲が問われる場面で活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)3304 / 裁判年月日: 昭和30年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法6条(時に関する刑の適用)について、犯罪後の法律によって刑の変更があった場合に該当しない限り、同条を適用する必要はないとするのが相当である。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、刑法6条の適用に関する主張を含む法令違反及び量刑不当を理由として上告を申し立てた。原審は、本件において刑法6条の適…
事件番号: 昭和26(あ)2347 / 裁判年月日: 昭和30年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律における無届貸金業者に対する罰則規定は、経済活動の自由の合理的制限として憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、貸金業等の取締に関する法律に基づく届出を行わずに貸金業を営んだとして、同法の罰則規定の適用を受けた事案。被告人は、当該罰則規定が憲法の保障する経済的自由…
事件番号: 昭和28(あ)3644 / 裁判年月日: 昭和29年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】「貸金業等の取締に関する法律」2条にいう「貸金業」とは、反復継続の意思をもって、金銭の貸付けまたは金銭の貸借の媒介をすることを指す。 第1 事案の概要:被告人が「貸金業等の取締に関する法律」(当時の法律)2条に規定される「貸金業」に該当する行為を行ったとして起訴された。弁護人は、原判決の判断に判例…
事件番号: 昭和27(あ)6352 / 裁判年月日: 昭和30年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律による規制は、憲法22条1項の保障する職業選択の自由を不当に圧迫するものではなく、公共の福祉による正当な制限として合憲である。 第1 事案の概要:上告人は、貸金業等の取締に関する法律(旧法)の規定が、憲法22条が保障する職業選択の自由を不当に圧迫し違憲であると主張して上告…