所論は、自転車競技法第一八条第二項の処罰規定は、憲法第二五条第二項に違反するものであるから、これに基づき処罰することは違憲であると主張する。しかし、憲法第二五条の法意は、国がすべての生活部面について社会福祉、社会保障の向上及び増進のための公共的配慮をなすべき責務のあることを宣言したにとどまり、個々の国民に対し、これに対応して具体的、現実的な権利を有することを認めたものと解すべきではなく、また、国が犯罪者に対し刑罰を定めその適用に関する規定を立法するについて制限を加えたものと解すべきでないことも、いずれも当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷判決、集二巻一〇号一二三五頁、昭和二二年(れ)第一〇五号同二三年四月七日大法廷判決、集二巻四号二九八頁、昭和二五年(あ)第二二八号同年七月一九日大法廷判決、集四巻八号、一四八八頁各参照)の趣旨に徴して明らかである。されば、所論自転車競技法第一八条第二号の規定が憲法第二五条第二項に違反するから無効である旨の主張の採ることを得ないことは、右判例の趣旨に照して明らかである。
自転車競技法第一八条第二号の合憲性(憲法第二五条第二項)
憲法25条2項,自転車競技法18条2項
判旨
憲法25条2項は、国が社会福祉等の向上に努めるべき責務を宣言したものに留まり、個々の国民に具体的権利を付与したり、刑罰規定の立法を制限したりするものではない。したがって、自転車競技法の処罰規定が同条項に違反し無効となることはない。
問題の所在(論点)
自転車競技法18条2号の処罰規定は、生存権(社会保障等の向上・増進)を定めた憲法25条2項に違反し、無効となるか。
規範
憲法25条2項は、国がすべての生活部面において社会福祉、社会保障等の向上及び増進のための公共的配慮をなすべき政治的・道徳的な責務を宣言した規定である。そのため、個々の国民が国に対して具体的・現実的な権利を有するものではなく、また、国が犯罪者に対し刑罰を定める立法権を制限するものでもない。
重要事実
被告人が、自転車競技法18条2号の規定に基づき処罰されたことに対し、当該処罰規定が、国民の生活向上等を目的とする憲法25条2項の趣旨に反する違憲なものであると主張して、上告を申し立てた事案である。
あてはめ
憲法25条2項の性質に照らせば、同条項は国のプログラム的義務を定めたものであり、立法府がどのような行為を犯罪として処罰するかという刑事立法の裁量を拘束する性質のものではない。本件の自転車競技法18条2号の規定は、同条項が想定する社会福祉等の向上・増進という責務とは直接関係のない刑事罰の領域であり、同条項によってその効力が制限される余地はない。
結論
自転車競技法18条2号の処罰規定は憲法25条2項に違反せず、合憲である。上告を棄却する。
実務上の射程
生存権(25条)の法的性格について、プログラム規定説的な立場を再確認する際に引用される。特に、25条を根拠に特定の刑事罰規定の違憲性を争うことは、同条が具体的な権利を付与するものでも立法権を制限するものでもない以上、認められないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和36(あ)2912 / 裁判年月日: 昭和39年3月31日 / 結論: 棄却
所論は、原判決の是認した第一審判決が本件に適用した罰条は、特定の地方公共団体が車券を発行する場合を除外し、それ以外の者が車券を発行した場合にのみ処罰することを定めた規定であつて憲法第一四条、第二二条に違反するから、その適用を是認した原判決は、右憲法の規定に違反すると主張するが、原判決が是認した本件の適条は、自転車競技法…