所論は、原判決の是認した第一審判決が本件に適用した罰条は、特定の地方公共団体が車券を発行する場合を除外し、それ以外の者が車券を発行した場合にのみ処罰することを定めた規定であつて憲法第一四条、第二二条に違反するから、その適用を是認した原判決は、右憲法の規定に違反すると主張するが、原判決が是認した本件の適条は、自転車競技法(昭和三七年法律第八四号による改正前のもの)第一八条第二号であつて、右規定は「競輪に関して、勝者投票類似の行為をさせて財産上の利益を図つた者は、五年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と定められており、その行為は車券の発行とは関係がなく、またその行為者は所論の者のみに限られていないことが法文上明らかであるから、所論違憲の主張は前提を欠き適法な上告理由に当らない。
第一審判が適用した自転車競技法(昭和三七年法律第八四号による改正前のもの)第一八条第二号に対する憲法第一四条、第二二条違反の主張とその適用を是認した原判決に対する上告理由の適否。
自転車競技法(昭和37年法律84号による改正前のもの)18条2号,憲法14条,憲法22条,刑訴法405条
判旨
自転車競技法における勝者投票類似行為の処罰規定は、車券の発行とは無関係に競輪に関する射幸行為を禁ずるものであり、憲法14条、22条、29条に違反しない。
問題の所在(論点)
自転車競技法18条2号が、特定の地方公共団体等を除外して「勝者投票類似の行為」を処罰の対象としている点は、憲法14条、22条、29条に違反するか。
規範
特定の公的機関以外の者による勝者投票類似行為を処罰する規定は、車券の発行主体や特定の者に限定されず、競輪の公正かつ健全な運営を目的とする公序良俗維持の観点から、憲法上の平等権(14条)や経済的自由(22条、29条)を不当に侵害するものではない。
重要事実
被告人は、競輪に関して勝者投票類似の行為をさせ、財産上の利益を図ったとして、自転車競技法(昭和37年改正前)18条2号に基づき起訴された。これに対し被告人側は、特定の地方公共団体による車券発行のみを適法とし、それ以外の者を処罰する本規定は、憲法14条の法の下の平等、22条の職業選択の自由、および29条の財産権に違反すると主張して上告した。
あてはめ
自転車競技法18条2号は「競輪に関して、勝者投票類似の行為をさせて財産上の利益を図った者」を処罰対象としており、法文上、その行為は車券の発行とは直接の関係がない。また、処罰される主体も特定の者に限定されているわけではない。したがって、地方公共団体との差別を主張する被告人の違憲主張は、規定の解釈において前提を欠くものである。また、不当に財産を奪う法律であるとの主張も、当該罰条自体に対する具体的な論難とは認められない。
結論
本件処罰規定は憲法14条、22条、29条に違反せず、合憲である。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
射幸心を煽る行為を規制する法規範の合憲性を肯定した判例であり、経済的自由の制限が公の秩序維持のために許容される範囲内であることを示す。また、違憲主張を行う際には、適用される条文の内容を正確に特定し、それに対する具体的な反論を要することを実務的に示唆している。
事件番号: 昭和35(あ)36 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自転車競技法18条2号が定める禁止規定は、憲法に違反しない。先行する大法廷判例の趣旨に照らし、公営競技の射幸性を規制する合理的な立法目的とその手段の正当性が認められる。 第1 事案の概要:被告人が自転車競技法18条2号の規定に違反する行為を行ったとして起訴された事案。被告人側は、同条の規定が憲法に…