所論は違憲をいうけれども、犯情の類似した被告人間に処罰上の差異があつても憲法一四条に違反するものではないこと当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第四三五号同年一〇月六日大法廷判決、集二巻一一号一二七五頁)とするところであつて、この趣旨は、他の多数の違反者が検挙されず或は起訴されなかつた場合に、被告人のみが起訴処罰された場合にも推し及ぼされるべきものである。従つて、所論のようにたとえ他の同種の違反者が検挙処罰されなかつたからといつて、いやしくも起訴公判に附されてこれが審理の結果被告人を有罪とした原判決を目して憲法一四条に違反すること論ずることはできない。
他の同種の違反者が検挙処罰されず被告人のみが起訴処罰された場合と憲法第一四条。
憲法14条
判旨
他の多数の違反者が検挙・起訴されない中で特定の被告人のみが起訴されたとしても、処罰上の差異が生じることは憲法14条に違反しない。
問題の所在(論点)
多数の同種違反者が検挙・起訴されない状況で、特定の者のみを起訴・処罰することが、憲法14条の法の下の平等に反し、公訴権の濫用等として許されないのではないか。
規範
犯情の類似した被告人間に処罰上の差異があっても憲法14条には違反しない。この法理は、多数の違反者が検挙・起訴されない中で、特定の被告人のみが起訴・処罰される場合にも適用される。
重要事実
被告人は刑事事件において起訴され、有罪判決を受けた。これに対し、被告人側は、同種の違反者が多数存在するにもかかわらず、他の違反者が検挙・処罰されず、被告人のみが起訴・処罰されたことは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)725 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】多数の同種違反者が起訴されずに被告人のみが起訴・処罰されたとしても、直ちに憲法14条の平等原則に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪事実について起訴された際、同様の違反行為を行っている者が多数存在し、かつそれらの者が起訴されていない状況において、被告人のみが起訴・処罰される…
あてはめ
たとえ他の同種の違反者が検挙・処罰されていないという事実があったとしても、適法に公判に付され、審理の結果として犯罪事実が認められ有罪とされた以上、それは個別の刑事責任の追及として正当である。他の未検挙者との比較において処罰の有無に差異が生じることは、法適用の結果として許容される範囲内であり、不合理な差別には当たらないと解される。
結論
他の同種違反者が処罰されていないからといって、被告人のみを有罪とした判決が憲法14条に違反することはない。
実務上の射程
検察官の起訴裁量権に対する憲法14条(法の下の平等)からの制約の限界を示す判例である。恣意的な選別起訴(公訴権濫用)を主張する際の否定的な先例として機能するが、本判決はあくまで「処罰の差異」が直ちに違憲ではないとするものであり、起訴自体が著しく不当な目的で行われた場合の構成については別途検討の余地がある。
事件番号: 昭和27(あ)2674 / 裁判年月日: 昭和28年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同種犯の中で一部の者のみが起訴され有罪となっても、その裁判は憲法14条に違反せず、また憲法37条1項の「公平な裁判所」とは組織・構成の偏頗のなさを意味するため、内容の公正妥当性を理由に同条違反を問うことはできない。 第1 事案の概要:被告人が同種の犯罪に関わった他の者が起訴されていないにもかかわら…
事件番号: 昭和25(あ)2222 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、原判決の違憲主張について、過去の大法廷判例を引用して理由がないと判示し、その他の主張も適法な上告理由に当たらないとして上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人は、原判決に憲法違反があるとして上告を申し立てた。具体的事案の詳細は判決文からは不明であるが、弁護人は上告趣意の第一点及び第四点…
事件番号: 昭和25(あ)1417 / 裁判年月日: 昭和25年9月19日 / 結論: 棄却
上告審に如何なる事項を以つて上告申立の理由とするか、又職權調査の範圍を如何に定めるかは立法上の問題であり、憲法第八一條の外には何等これを制限した規定は存しないのであるから、刑事訴訟法がその第四〇五條各號に規定する事由だけを上告申立の理由とすることを許し、同法第四一一條に規定する各事由を上告審の職權による破棄事由としなが…
事件番号: 昭和24新(れ)22 / 裁判年月日: 昭和25年9月27日 / 結論: 棄却
元來一時不再理の原則は、何人も同じ犯行について、二度以上罪の有無に關する裁判を受ける危險に曝さるべきものではないという根本思想に基くことは言うをまたぬ。そして、その危險とは、同一の事件においては、訴訟手續の開始から終末に至るまでの一つの繼續的状態と見るを相當とする。されば、一審の手續も控訴審の手續もまた、上告審のそれも…