(裁判官奥野健一の少数意見)職権により調査するに、本件没収に係る貨物は被告人ら以外の第三者であるA冷房株式会社の所有に属するものであることは記録上明白であり、その所有者である第三者に対し告知、弁解、防禦の機会を与えることなく没収することは憲法上許されないことは当裁判所の判例とするところであるが、被告人Bは第一審当時本件貨物の所有者である右会社の代表取締役であつたことが記録上明らかであるから、右会社は実質的に本件没収につき告知、弁解、防禦の機会が与えられていたというべきである。しかし、行為当時の代表者は同被告人でなく、当時の代表者が関税法第一一八条第一項第一号に該当するか否かにつき何ら審理判断することなく、本件貨物の没収の言渡をした第一審判決およびこれを是認した原判決は違法たるを免れない(昭和二六年(あ)一八九七号、同三二年一一月二七日大法廷判決(C事件)、刑集一一巻一二号三一三二頁参照)。
関税法により第三者(法人)の所有物を没収するにあたり、犯罪行為当時の代表者が同法第一一八条第一項第一号に該当するか否かについての審理判断の要否。
関税法110条,関税法117条,関税法118条,憲法29条,憲法31条,憲法39条,刑訴法411条1号
判旨
刑罰法令において一の犯罪に対する法定刑として主刑と没収または追徴を併科する規定がある場合、同一の裁判によりこれらを併科することは憲法39条後段が禁止する二重の処罰には当たらない。
問題の所在(論点)
一の犯罪に対し、主刑と没収または追徴を併科することが、憲法39条後段(二重処罰の禁止)に抵触しないか。
規範
刑罰法令上、一の犯罪に対する法定刑として主刑および没収またはこれに代わる追徴を併科しうる旨の規定がある場合、一の裁判によりその一個の犯罪につき法定の主刑および没収または追徴を併科することは、憲法39条後段の禁止する二重の処罰には当たらない。
重要事実
被告人両名は、関税法違反等の罪に問われた際、同法118条1項に基づき、主刑とともに犯罪に係る貨物の没収、または没収不能な場合の追徴を言い渡された。これに対し被告人側は、主刑と追徴を併科することは一の犯罪に対して二重の刑罰を科すものであり、憲法39条後段に違反すると主張して上告した。なお、没収対象の貨物は被告人ら以外の第三者(A冷房株式会社)の所有に属するものであったが、被告人の一人が第一審当時その代表取締役であったという事実関係が存在した。
あてはめ
憲法39条後段が禁じているのは、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うことである。本件において適用された関税法等の規定は、当初から一つの犯罪に対する法定刑として、主刑と没収・追徴を併せて科すことができるよう定めている。このように、単一の刑事裁判手続の中で、あらかじめ併科が予定されている複数の刑罰的内容を一つの判決で言い渡すことは、既に確定した判決があるにもかかわらず再度処罰する「二重の処罰」には該当しないと解される。したがって、本件における併科は憲法の要請に反するものではない。
結論
主刑と没収または追徴の併科は憲法39条後段に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事法における没収・追徴の性質(付加刑的側面)を確認する際の基礎判例である。答案上では、憲法39条の「二重処罰」の定義を論じる際や、行政罰と刑事罰の併科が問題となる場面での比較対象として言及することが想定される。また、第三者所有物の没収に関しては、本判決の少数意見が触れている通り、適正手続(告知・弁解・防禦の機会)の観点から別途検討が必要である(最大判昭37・11・28参照)。
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。