許可を受けて適法に旅館営業を営む者であつても、公衆浴場法第二条第一項による都道府県知事の許可を受けないで、旅館附属の入浴施設を直接入浴のみを目的とする不特定多数の一般人に利用させ、業として公衆浴場を経営したと認められるときは、同法第二条第一項、第八条第一号所定の罪が成立すると解すべきである。
旅館営業者につき公衆浴場法第二条第一項、第八条第一号の罪の成立する事例。
公衆浴場法2条1項,公衆浴場法8条1号
判旨
旅館業の許可を受けている者であっても、入浴のみを目的とする不特定多数の一般人に旅館附属の入浴施設を利用させ、業として公衆浴場を経営したと認められるときは、公衆浴場法上の許可が必要である。
問題の所在(論点)
旅館業法に基づく許可を受けて旅館を営む者が、その附属入浴施設を一般公衆に利用させる行為について、公衆浴場法2条1項の許可を要するか。別の営業許可があることをもって、同法所定の罪(8条1号)の成立が否定されるかが問題となる。
規範
公衆浴場法2条1項にいう「公衆浴場」の経営に当たるか否かは、施設の主たる目的、利用客の範囲、及び営業の実態によって判断される。たとえ別個の行政許可(旅館業法等)に基づく営業に附属する施設であっても、直接入浴のみを目的とする不特定多数の一般人に利用させ、業として経営される実態がある場合には、同法に基づく知事の許可を要する。
重要事実
被告人は、適法に旅館営業の許可を受けていたが、旅館に附属する入浴施設を、宿泊客以外の不特定多数の一般人に対し、直接入浴のみを目的として利用させていた。被告人は、公衆浴場法2条1項に基づく都道府県知事の許可を得ていなかった。
事件番号: 昭和36(あ)3052 / 裁判年月日: 昭和39年7月21日 / 結論: 破棄差戻
本件組合浴場のように、利用者は組合員たる資格を有するものに限定されていても、当該地域の住民であるかぎり組合への加入脱退は各人の自由であるなど、組合の組織、構成の実態に照らし利用者の性格が一般公衆性、社会性を具有するものと認められるもの(判文参照)は、公衆浴場法第二条第一項の「公衆浴場」にあたるものと解すべきである。
あてはめ
被告人が提供していた入浴サービスは、宿泊の付随行為にとどまらず、直接入浴のみを目的とする不特定多数の一般人を対象としていた。これは実態として「業として公衆浴場を経営」したものと認められる。したがって、旅館業の許可を有しているという事実は、公衆浴場法上の無許可営業罪の成立を妨げるものではない。
結論
旅館附属の施設であっても、一般公衆に利用させる実態がある以上、公衆浴場法2条1項の許可を要する。無許可での経営は同法8条1号の罪を構成する。
実務上の射程
行政法規の二重適用の問題として活用できる。特定の事業許可を得ていても、その活動が別の規制法が目的とする事業実態を備えるに至った場合には、別途その法律の許可を要することを明示した射程の広い判決である。
事件番号: 昭和42(あ)426 / 裁判年月日: 昭和42年10月25日 / 結論: 棄却
いわゆる「トルコ風呂」は、昭和三九年法律第一二一号による改正前の公衆浴場法の規整の対象となる。
事件番号: 昭和33(オ)710 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 破棄差戻
既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可処分の無効確認を求める訴の利益を有しないとはいえない。