既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可処分の無効確認を求める訴の利益を有しないとはいえない。
既存の公衆浴場営業者の第三者に対する公衆浴場営業許可処分の無効確認を求める訴の利益の有無
行政事件訴訟特例法1条,公衆浴場法2条,京都府公衆浴場法施行条例1条
判旨
公衆浴場法の距離制限規定は、国民保健上の見地のみならず、既存業者の濫立による経営の不合理化を防止する意図も有しており、既存業者の営業上の利益は法律上保護された利益に当たる。したがって、近隣に新規許可がなされた場合、既存業者は当該許可処分の取消しを求める原告適格を有する。
問題の所在(論点)
公衆浴場法2条に基づく適正配置(距離制限)規定によって既存業者が受ける営業上の利益は、行政訴訟における原告適格を基礎づける「法律上保護された利益」に該当するか。
規範
行政事件訴訟法上の「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。当該法律の規定が、単に公衆衛生等の公益を保護するだけでなく、特定の範囲の者の個人的利益をも保護する趣旨を含む場合、その利益は単なる反射的利益ではなく、法律上保護された利益と解される。
重要事実
公衆浴場を経営する上告人らの近隣において、京都府知事が第三者Dに対し公衆浴場営業の許可を与えた。京都府の条例では公衆浴場間の距離を250メートル以上保つべき距離制限が設けられていたが、本件許可はこの基準に抵触する疑いがあった。上告人らは、当該許可が違法であるとして無効確認を求めて出訴したが、一審・二審は、既存業者の利益は単なる反射的利益にすぎないとして、訴えを却下したため、上告した。
事件番号: 昭和60(行ツ)197 / 裁判年月日: 平成元年3月7日 / 結論: 棄却
公衆浴場法二条二項及び大阪府公衆浴場法施行条例二条は、憲法二二条一項に違反しない。
あてはめ
公衆浴場法が許可制を採用し、適正な配置を求めているのは、公衆浴場が国民の日常生活に不可欠な公共性を伴う施設だからである。配置の適正化を図る趣旨は、偏在による利用者の不便を防ぐとともに、濫立による過当競争を防止し、経営の不合理化からくる衛生設備の低下等を防ぐことにある。そうであれば、同法は濫立による経営の不合理化から被許可者を守ろうとする意図も有している。したがって、適正な許可制度の運用によって保護される既存業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益ではなく、公衆浴場法によって保護される法的利益と解するのが相当である。
結論
既存業者の営業上の利益は法律上保護された利益であり、原告適格が認められる。本案審理を尽くさせるため、原判決を破棄し、第一審裁判所に差し戻す。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「業法」における距離制限規定を根拠に、既存業者の原告適格(法律上の利益)を認めたリーディングケースである。答案上では、行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」を解釈する際、当該規定が「公益だけでなく個人の個別的利益も保護する趣旨か」を判断する枠組みとして活用する。特に、過当競争防止による経営安定が公衆衛生等の公益確保に直結する構造(経済的規制と警察的規制の混在)において有効な論拠となる。
事件番号: 昭和37(オ)877 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
公衆浴場設置場所の配置の基準に関する東京都条例第二条但書の規定は、公衆浴場法第二条第三項の委任の範囲を逸脱し無効であるとはいえない。
事件番号: 昭和26(オ)853 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第三者に対する公衆浴場営業許可処分は、上告人の居住の自由を侵害するものではなく、憲法違反の主張は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、第三者に対してなされた公衆浴場営業許可処分の取消しを求めた。上告人は、当該許可処分が自己の居住の自由を侵害し、憲法に違反するものであると主張して…
事件番号: 昭和35(オ)1455 / 裁判年月日: 昭和36年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公衆浴場営業の不許可処分が、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の限界を逸脱した違法なものであるか否かは、距離制限基準への適合性だけでなく、土地の状況や予想利用者数等を総合的に考慮して判断される。前回の申請から状況に変化がない場合に、同様の調査結果に基づき不許可とすることは、特段の事情がない限り裁量…