公衆浴場設置場所の配置の基準に関する東京都条例第二条但書の規定は、公衆浴場法第二条第三項の委任の範囲を逸脱し無効であるとはいえない。
公衆浴場設置場所の配置の基準に関する東京都条例第二条但書の効力。
公衆浴場法2条3項,公衆浴場設置場所の配置の基準に関する東京都条例2条
判旨
公衆浴場法2条に基づく距離制限の規定は、公衆衛生の維持という公益目的のみならず、既設営業者の経営の安定を図ることで浴場提供の継続を担保し、国民保健上の必要を充足するという法的利益も保護している。したがって、近接場所での営業許可により不利益を受ける既設業者は、当該許可の取消しを求める法律上の利益を有する。
問題の所在(論点)
公衆浴場法2条3項に基づく設置場所の配置基準(距離制限)により、既設営業者が受ける利益は「法律上保護された利益」にあたるか。行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」の解釈が問題となる。
規範
公衆浴場法2条及びそれに基づく条例の距離制限は、単なる反射的利益を付与するものではなく、既設営業者の営業上の利益を保護の対象としている。法が距離制限を設けた趣旨は、乱立による経営不振からくる衛生設備等の不備を防止し、もって国民保健という公共の福祉を維持することにある。したがって、適正な配置基準に反する許可がなされた場合、既設業者は当該行政処分により自己の法的利益を侵害された者として、処分の違法を争う適格を有する。
重要事実
上告人(既設営業者)が公衆浴場を営む場所の近接地に、東京都知事が公衆浴場法2条及び東京都条例に基づき、第三者に対し公衆浴場の設置許可を与えた。上告人は、当該許可が条例の配置基準に違反し、自らの営業上の利益を侵害するものであるとして、許可処分の取消し等を求めて提訴した。これに対し、被告側は既設業者の利益は反射的利益に過ぎず、原告適格がないと主張した。
事件番号: 昭和33(オ)710 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 破棄差戻
既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可処分の無効確認を求める訴の利益を有しないとはいえない。
あてはめ
公衆浴場は、国民の日常生活において欠くべからざる保健福祉施設であり、その経営が不合理な競合により破綻することは、公衆衛生の維持という観点から望ましくない。法が距離制限を設けたのは、既設業者の経営の経済的基盤を確保することで、浴場施設が適正に維持・提供されることを目的としている。本件条例2条但書による例外的な許可がなされたとしても、それが法の委任の範囲を逸脱し、あるいは合理的な理由なく既設業者の経営を脅かすものであれば、上告人が受ける不利益は単なる事実上の不利益にとどまらない。
結論
既設営業者は、近接地に公衆浴場設置許可がなされたことによる自己の利益侵害を理由として、当該許可処分の違法を主張し、その取消しを求める訴えを提起する法律上の利益を有する。
実務上の射程
行政事件訴訟における原告適格(行訴法9条)の判断基準を示す重要判例である。いわゆる「競業者訴訟」において、根拠法規が公益のみならず私人の利益も保護しているかを判断する際のメルクマールとなる。本判決は、実質的経済規制が既設業者の独占的地位を保護する性質を持つ場合に、原告適格を広く認める傾向を決定づけた。
事件番号: 昭和34(あ)1422 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
公衆浴場法第二条および昭和二四年奈良県条例第二号公衆浴場法施行条例第一条の二は、憲法第二二条、第一四条に違反しない。
事件番号: 昭和26(オ)853 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第三者に対する公衆浴場営業許可処分は、上告人の居住の自由を侵害するものではなく、憲法違反の主張は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、第三者に対してなされた公衆浴場営業許可処分の取消しを求めた。上告人は、当該許可処分が自己の居住の自由を侵害し、憲法に違反するものであると主張して…