本件組合浴場のように、利用者は組合員たる資格を有するものに限定されていても、当該地域の住民であるかぎり組合への加入脱退は各人の自由であるなど、組合の組織、構成の実態に照らし利用者の性格が一般公衆性、社会性を具有するものと認められるもの(判文参照)は、公衆浴場法第二条第一項の「公衆浴場」にあたるものと解すべきである。
公衆浴場法第二条第一項の「公衆浴場」にあたるとされた事例。
公衆浴場法1条,公衆浴場法2条1項,公衆浴場法8条1号
判旨
公衆浴場法上の「公衆浴場」とは、たとえ組合員等の特定の資格を有する者に利用者が限定されていたとしても、その実体が浮動する一般住民多数であって、利用者の性格に一般公衆性・社会性が認められる場合にはこれに該当する。
問題の所在(論点)
組合員のみを利用対象とする会員制の浴場経営が、公衆浴場法2条1項の許可を要する同法1条1項の「公衆浴場」に該当するか。
規範
公衆浴場法1条1項にいう「公衆浴場」に該当するか否かは、同法が公衆に対する保健衛生と風紀上の取締・指導の必要から許可制を採用した趣旨に照らし、利用者の性格が「一般公衆性・社会性」を具有するか否かによって判断すべきである。たとえ会員制・組合制の形式を採っていても、利用者の実体が時とともに浮動する当該地域の一般住民多数であり、市井の公衆浴場と実質的に異ならない場合には、同法の営業規制の対象となる。
重要事実
被告人は、自ら組合長として「A衛生浴場協同組合」を設立し、自己所有の浴場施設を提供して組合員から入浴の都度、維持費名目の料金を徴収して経営していた。組合員は同町の住民をもって構成され、当初30数世帯であったが順次拡大した。組合規約上、同町住民であれば加入脱退は自由であり、実質的に利用を希望する地域住民に広く門戸が開かれていた。
あてはめ
本件浴場は、組合員資格を有する者に限定されているものの、町住民であれば加入脱退が自由である。そのため、利用者の実体は「時とともに浮動する当該地域の一般住民多数」であるといえ、組合員という形式的な枠を除けば市井の公衆浴場の利用者と実質的に差異はない。したがって、利用者の性格には「一般公衆性・社会性」が認められる。公衆浴場法が保健衛生等の観点から許可制を設けた法意に照らせば、本件組合浴場は同法1条1項の公衆浴場の一形態に当たる。
結論
本件組合浴場は公衆浴場法上の「公衆浴場」に該当し、同法の営業規制の対象となる。
実務上の射程
「公衆」の定義が問題となる場面(例えば、不特定多数ではなく特定多数を対象とする活動)における判断枠組みとして活用できる。形式的な会員制であっても、加入の自由度や利用者の実態から「一般公衆性」を認定する論法は、公衆浴場法に限らず、他の公物管理や行政規制法規の解釈においても汎用性が高い。
事件番号: 昭和34(あ)1422 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
公衆浴場法第二条および昭和二四年奈良県条例第二号公衆浴場法施行条例第一条の二は、憲法第二二条、第一四条に違反しない。