一 公衆浴場法(昭和二五年法律第一八七号による改正後のもの)第二条第二項後段の、「公衆浴場の設置場所が配置の適正を欠くと認められる場合には、都道府県知事は公衆浴場の経営を許可しないことができる」旨の規定並びに昭和二五年福岡県条例第五四号三条の、公衆浴場の設置場所の配置の基準等を定めている規定は、いずれも職業選択の自由を保証する憲法第二二条に違反しない。 二 同条例第三条ないし第五条の規定は、公衆浴場法第二条の範囲内で同法が例外的に不許可とする場合の細則を定めたもので、憲法第九四条に違反しない。
一 公衆浴場法(昭和二五年法律第一八七号による改正後のもの)第二条第二項後段の規定並びに昭和二五年福岡県条例第五四号第三条の規定と憲法第二二条 二 同条例第三条ないし第五条と憲法第九四条
憲法22条,憲法94条,公衆浴場法(昭和25年法律187号による改正後のもの)2条,昭和25年福岡県条例54号
判旨
公衆浴場法の距離制限規定は、国民の日常生活に不可欠な施設の偏在や濫立を防ぎ、国民保健および環境衛生を維持するための合理的な制限であり、憲法22条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
公衆浴場法およびこれに基づく県条例が定める「距離制限(適正配置規制)」が、職業選択の自由(憲法22条1項)を侵害し違憲とならないか。また、条例の内容が法律の範囲を逸脱し憲法94条に違反しないか。
規範
職業の自由に対する制限が、公共の福祉に基づき、その目的が正当であり、かつ、その目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内にある場合には、憲法22条1項に違反しない。
重要事実
公衆浴場法2条2項後段は、設置場所が配置の適正を欠く場合に知事が経営を許可しないことができる旨を定めている。これに基づき福岡県条例は具体的な距離制限等の配置基準を設けた。被告人は、かかる制限が職業選択の自由を違法に侵害し、憲法22条1項および憲法94条(法律の範囲内での条例制定)に違反すると主張して争った。
あてはめ
まず、公衆浴場は国民の日常生活に必要不可欠な公共性を伴う厚生施設である。配置規制がない場合、施設の「偏在」により利用者の不便を招き、あるいは「濫立」による過当競争から経営が不合理となり、衛生設備の低下を招くおそれがある。このような事態を防止し、国民保健および環境衛生を維持する目的は正当である。次に、適正な配置を保つための許可制および距離制限は、上記目的を達成するための合理的措置といえる。さらに、条例は法律の委任に基づき不許可事由を具体化したものであり、法律の建前を変更するものではないため、法律の範囲内といえる。
結論
公衆浴場法および本件条例の規定は、公共の福祉にかなう合理的な制限であり、憲法22条1項および94条に違反しない。
実務上の射程
消極目的規制(警察制限)の代表例とされるが、判示は「公共の福祉」による制約を一般的に肯定するにとどまる。後の薬局距離制限違憲判決(最大判昭50.4.30)と比較し、公衆浴場の特殊性(国民保健上の必要性)に着目した判断として、二重の基準論や厳格な合理性の基準の文脈で検討すべき事案である。
事件番号: 昭和34(あ)1422 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
公衆浴場法第二条および昭和二四年奈良県条例第二号公衆浴場法施行条例第一条の二は、憲法第二二条、第一四条に違反しない。
事件番号: 昭和60(行ツ)197 / 裁判年月日: 平成元年3月7日 / 結論: 棄却
公衆浴場法二条二項及び大阪府公衆浴場法施行条例二条は、憲法二二条一項に違反しない。