一 行使の目的をもつて有効に成立している他人振出名義の小切手の金額欄の数字をインキ消で抹消した上、ほしいままに同欄に別の金額をあらたにペンで記入したときは、有価証券の偽造罪ではなく、その変造罪が成立する。 二 有価証券の変造にあたるものと解すべき場合に、第一審判決がこれを有価証券の偽造にあたると判示したとしても、判決を破棄する事由とはならない。
一 有価証券変造罪の成立する事例 二 刑訴法第四一一条第一号にあたらない事例 ―有価証券の偽造と変造
刑法162条1項,刑訴法380条,刑訴法411条1号
判旨
上告理由を具体的に特定せず、単なる法令違反や事実誤認を主張するにとどまる場合、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。また、判例違反を主張する際も、原判決がいかなる点において判例と相反するかを具体的に示さなければ不適法である。
問題の所在(論点)
被告人らによる主張が、刑事訴訟法405条所定の上告理由(特に判例違反の主張の適法性)に該当するか。
規範
刑訴法405条各号に規定された上告理由(憲法違反、憲法解釈の誤り、最高裁または控訴審裁判所の判例との相反)について、具体的かつ適法な主張がなされない限り、上告は棄却される。特に判例違反を主張する場合には、対象となる判例を特定し、原判決の判断がその判例のいかなる点と相反するかを明示する必要がある。
重要事実
被告人A、B、Cおよびそれぞれの弁護人が上告を申し立てた。被告人Aの弁護人は法令違反および判例違反を主張したが、判例の具体的な相反箇所を示さなかった。被告人B側は事実誤認・量刑不当を主張し、判例違反については具体的判例を示さなかった。被告人Cの弁護人は訴訟法違反および事実誤認のみを主張した。
あてはめ
被告人Aの主張する判例違反は、原判決が所論判例のいずれの点と相反する判断をしているのかが示されておらず不適法である。被告人BおよびCの主張は、単なる事実誤認、量刑不当、または法令・訴訟法違反の主張に帰しており、刑訴法405条が限定的に定める上告理由のいずれにも該当しない。また、職権による調査(411条)を要するような重大な事由も認められない。
結論
本件各上告は、刑訴法405条の上告理由に当たらない不適法なもの、あるいは理由のないものとして、同法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟の実務において、上告趣意書には単なる事実関係の不服ではなく、憲法違反や具体的判例との矛盾を厳密に摘示する必要があることを示す。判例違反の主張における「具体性」の欠如は、それだけで形式的に不適法とされるリスクがある点に注意が必要である。
事件番号: 昭和31(あ)4036 / 裁判年月日: 昭和34年7月3日 / 結論: 棄却
一 甲、乙間に覚せい剤売買に関する合意が成立し、甲が乙の面前において、情を知らない丙に合札を渡し、荷物預り所に預けてある覚せい剤の受取方を委託し、丙がこれを承諾し、甲または乙に交付するつもりで右覚せい剤を受け取つたときは、乙はその覚せい剤譲受の実行に着手したものと認めることができる。 二 「被告人は法定の除外事由がない…
事件番号: 昭和26(あ)559 / 裁判年月日: 昭和27年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告適法性の要件として、判例違反を主張する場合には当該判例を具体的に特定する必要があり、その特定を欠く場合やその他の上告理由に該当しない主張は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた際、弁護人が提出した上告趣意書において末尾で「判例違反」に言及していた。しかし、具体的に…
事件番号: 昭和44(あ)1332 / 裁判年月日: 昭和45年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において適法な上告理由となるためには、事実誤認や単なる法令違反の主張では足りず、判例違反を主張する場合には当該判例を具体的に示す必要がある。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起した事案において、弁護人は第一点から第三点までの上告趣意を提出した。その内容は、事実誤認の主張、単なる法令違反の主…