一 甲、乙間に覚せい剤売買に関する合意が成立し、甲が乙の面前において、情を知らない丙に合札を渡し、荷物預り所に預けてある覚せい剤の受取方を委託し、丙がこれを承諾し、甲または乙に交付するつもりで右覚せい剤を受け取つたときは、乙はその覚せい剤譲受の実行に着手したものと認めることができる。 二 「被告人は法定の除外事由がないのに、昭和二九年一〇月二七日金沢市a町b番地被告人居宅において、覚せい剤二CC入りアンプル六、〇〇〇本を所持していたものである。」旨の訴因に対し、「被告人は法定の除外理由がないのに、右月日AをしてB運輸株式会社C支店より覚せい剤二CC入りアンプル二、八〇〇本を運ばせ、右被告人宅玄関前でこれを受け取り、もつて覚せい剤を所持したものである。」旨の事実を認定するには、訴因変更手続を必要としない。
一 覚せい剤取締法違反(不法譲受)罪の実行の着手があつたと認められる事例 二 訴因変更手続を必要としない事例
覚せい剤取締法17条3項,覚せい剤取締法41条1項4号,覚せい剤取締法41条3項,刑法43条,刑訴法312条
判旨
本決定は、弁護人の上告趣意が単なる法令違反および事実誤認の主張にすぎず、刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない場合には、上告を棄却すべきであると示した。
問題の所在(論点)
弁護人が主張する「法令違反」および「事実誤認」は、刑事訴訟法405条に規定される適法な上告理由に該当するか。
規範
刑事訴訟法405条が定める最高裁判所への上告理由は、憲法違反、憲法解釈の誤り、および最高裁判所(または大審院・上訴裁判所)の判例と相反する判断をしたことに限定される。これに該当しない単なる法令違反や事実誤認の主張は、適法な上告理由とはならない。
重要事実
上告人(被告人)の弁護人は、原判決(下級審判決)に対して上告を申し立てた。その上告趣意の内容は、法令の適用に誤りがあるとする法令違反の主張、および原判決が依拠した事実認定に誤りがあるとする事実誤認の主張を主とするものであった。
あてはめ
本件において弁護人が主張した事項は、憲法違反や判例違反を指摘するものではなく、原判決の法令解釈や事実認定の当否を争う「単なる法令違反と事実誤認の主張」にすぎない。最高裁判所が記録を精査しても、職権で原判決を破棄すべき(刑訴法411条)重大な事由も認められない。したがって、本件上告は405条の上告理由を欠くものと解される。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらないため、刑訴法414条・386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
司法試験の実務上、上告理由の制限(405条)を論じる際の基礎となる。単なる訴訟手続の違法や採証法則違反等は原則として上告理由にならず、憲法・判例違反という厳格な枠組みが必要であることを再確認する事例である。
事件番号: 昭和30(あ)1166 / 裁判年月日: 昭和30年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣意のうち違憲主張は、原審で主張・判断されていない事項であり、記録上も逮捕・勾留手続に違法は認められないため、刑訴法405条の上告理由に当たらない。その他の法令違反、事実誤認、量刑不当の主張も適法な上告理由にはならず、職権破棄すべき事由も認められない。 第1 事案の概要:被告人が逮捕・…