判旨
付審判請求において、前提となる法律の違憲性を主張する場合であっても、被疑事実としての具体的犯罪行為の存在について嫌疑がないと判断される限り、当該違憲の主張は結論に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
付審判請求の審理において、被疑事実の存在(犯罪の嫌疑)が認められない場合に、その職務執行の根拠となる法律の違憲性が審理の結論に影響を及ぼすか。
規範
公務員暴行陵虐罪等の付審判請求において、請求の対象となるべき具体的な犯罪行為の存在が証拠上認められない場合には、警察官の出動根拠となる法律の違憲性を論じるまでもなく、請求を棄却すべきである。
重要事実
特別抗告申立人が、土地測量に伴う警察官の警備行動について、特別公務員暴行傷害罪等の嫌疑があるとして付審判請求を行った。申立人は、警察官の行動の根拠となった特別措置法(日米行政協定関連)が違憲無効であり、その援護行動自体が権限を逸脱した違法なものであると主張した。しかし、原審は、具体的な加害者の特定ができず、被疑者に犯罪の嫌疑はないと判断して請求を棄却した。
あてはめ
申立人が主張する被疑犯罪行為は、刑法195条所定の暴行・陵虐等の具体的行為である。裁判所が証拠に基づき、そのような具体的な犯罪行為をした嫌疑がないと事実判断を下した以上、その出動の根拠法規が憲法に違反するか否かという点に関わりなく、犯罪嫌疑の存否という結論は左右されない。したがって、違憲の主張は、前提となる事実誤認があることをいうに過ぎず、適法な抗告理由とならない。
結論
犯罪の嫌疑がないという事実判断が維持される限り、根拠法の違憲性は結論に影響しない。本件抗告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和42(し)40 / 裁判年月日: 昭和42年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付随的申判請求(付記:検察審査会法上の用語との混同を避けるため、通常は「付審判請求」と称される)を棄却する決定に対して、直接最高裁判所に特別抗告を申し立てることは、刑事訴訟法433条の要件を備えず不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、旭川警察署の氏名不詳の警察官による特別公務員暴行の事実につ…
付審判請求の要件である「嫌疑の存在」の判断において、法律論(違憲論)よりも事実認定(具体的加害行為の有無)が先行することを明示した。行政警察活動や警備行動に伴う刑事責任を追及する実務において、抽象的な違憲論だけでは足りず、具体的な実行行為の特定と証拠の提示が不可欠であることを示唆している。
事件番号: 昭和45(し)83 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求事件において、第一審が確定した事実関係に基づき公務員職権濫用罪が成立しないと判断したことは正当であり、憲法違反等の主張は特別抗告の適法な理由にならない。 第1 事案の概要:本件は付審判請求事件である。第一審において、被請求人らによる公務員職権濫用罪の成立を否定する決定がなされた。これに対…
事件番号: 昭和63(し)76 / 裁判年月日: 平成元年3月14日 / 結論: 棄却
警察官が職務として行つたものであつても、終始何人に対しても警察官でないことを装つてした本件電話盗聴行為は、職権を濫用して行つたものとはいえず、公務員職権濫用罪を構成しない。
事件番号: 昭和33(し)41 / 裁判年月日: 昭和33年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の有無に関する原審の認定を不服とする主張は、適法な特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、被告人に対する勾留の事由が認められないとした原審の判断(勾留の取消しまたは執行停止等に関する判断と推測されるが、詳細は判決文からは不明)に対し、検察側あるい…
事件番号: 昭和43(し)25 / 裁判年月日: 昭和43年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法433条に基づく特別抗告において、憲法違反を主張する場合には、原決定のいかなる点がどのように憲法条項に違反するかを具体的に主張しなければならず、抽象的な主張に留まるものは適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:申立人は、自身が告訴した公務員職権濫用被疑事件について検察官がなした不…