判旨
禁錮以上の刑の執行猶予中の者が更に罪を犯した場合に再度の執行猶予(刑法25条2項)を付するためには、言い渡される刑が1年以下の懲役又は禁錮であることを要し、1年を超える刑を言い渡す場合には執行猶予を付すことはできない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予中の者が更に罪を犯し、1年を超える懲役刑の言渡しを受ける場合において、刑法25条2項に基づき再度の執行猶予を付することができるか。
規範
刑法25条2項は、前に禁錮以上の刑に処せられた者がその執行を猶予された場合において、さらに「1年以下の懲役又は禁錮の言渡し」を受け、かつ情状に特に酌量すべきものがあるときに限り、再度の執行猶予を許容している。したがって、宣告刑が1年を超える懲役又は禁錮である場合には、同条項を適用して執行を猶予することは法律上認められない。
重要事実
被告人は、以前に窃盗罪により懲役1年、3年間の執行猶予の言渡しを受け、その猶予期間中であった。被告人は当該猶予期間内に、新たに計14回に及ぶ自転車の窃盗事件を起こした。原審(福岡簡易裁判所)は、被告人に対し懲役1年6月の刑を言い渡すと同時に、被告人が執行猶予中であることを認識しながら、刑法25条2項を適用して5年間の執行猶予及び保護観察を付した。
あてはめ
本件において、被告人は前科により執行猶予中の身であり、刑法25条2項の適用対象となり得る立場にあった。しかし、原審が本件の被告人に対して言い渡した主文の刑は「懲役1年6月」である。同条項が再度の執行猶予の要件として明示する「1年以下の懲役又は禁錮」の限度を超えていることは明白である。それにもかかわらず執行猶予を付した原判決は、法令の適用を誤ったものといわざるを得ない。
結論
被告人が執行猶予中の身でありながら、1年を超える懲役刑を言い渡された本件において、刑法25条2項を適用して執行猶予を付した原判決の判断は違法であり、当該部分は破棄を免れない。
実務上の射程
再度の執行猶予(25条2項)の限界を明示した判例である。答案上は、執行猶予の要件検討において、宣告刑が1年を超える場合には、たとえ情状が極めて良好であっても、法律上の「1年以下」という数値基準により再度の猶予が遮断されることを指摘する際に用いる。
事件番号: 昭和36(あ)2694 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 棄却
刑法二五条二項但書の規定が、懲役または禁錮の執行を猶予され且つ猶予の期間中保護観察に付された者に対し、その期間内に犯した罪について、一年以下の懲役または禁錮の刑を言渡す場合においても、その刑の執行を猶予することを得ないとしているのは、かかる犯人には、再度の執行猶予を相当とする情状がないとするによるものであつて、裁判所の…
事件番号: 昭和29(さ)3 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
刑法第二五条第二項によれば、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、その執行を猶予された者が、一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け情状特に憫諒すべきものであるときは再び執行を猶予することができるのであるが、一年を超える懲役又は禁錮の言渡を受けたときは、その執行を猶予することはできないのである。しかるに原判決は前示の如…