一 刑法第二五条第二項は、前に禁錮以上の刑に処せられたその執行を猶予せられた者に対して一年以下の懲役または禁錮の言渡をなす場合に再度の執行猶予の言渡をなすことができる趣旨である。 二 刑訴第四〇六条刑訴規則第二五七条によつて受理された事件についても、同法第四一一条を適用することができる。
一 刑法第二五条第二項の法意 二 刑訴第四〇六条刑訴規則第二五七条によつて受理された事件と同法第四一一条の適用
刑法25条,刑訴法406条,刑訴法411条,刑訴規則257条
判旨
再度の執行猶予の言渡しは、刑法25条2項に基づき、言い渡される刑が1年以下の懲役又は禁錮である場合にのみ許される。本件のように前科の執行猶予期間中に犯した罪に対し懲役1年6月を言い渡しながら執行猶予を付した原判決は、同条項に違反し違法である。
問題の所在(論点)
執行猶予期間中の再犯に対し、1年を超える懲役刑を言い渡すと同時に再度の執行猶予を付すことの可否(刑法25条2項の「1年以下の懲役又は禁錮」という要件の充足性)。
規範
刑法25条2項(いわゆる再度の執行猶予)の適用要件は、①前に禁錮以上の刑に処せられたがその執行を猶予された者が、②執行猶予期間中にさらに罪を犯し、③言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」であって、④情状が特に憫諒すべきものであること。これら全ての要件を満たさない限り、再度の執行猶予を付すことはできない。
重要事実
被告人は、傷害致死罪により懲役3年・執行猶予3年の確定判決を受けていた。被告人は、当該猶予期間中に窃盗罪にあたる本件各犯行(併合罪)を犯した。原審は、被告人に前述の執行猶予中の前科があることを認め、かつ被告人を「懲役1年6月」に処しながら、刑法25条2項を適用してその刑の執行を猶予する旨の判決を言い渡した。
あてはめ
刑法25条2項本文は、再度の執行猶予が許される範囲を「1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受ける」場合に限定している。本件において、原審は被告人に対し「懲役1年6月」を言い渡しており、この法定の期間制限を超えている。したがって、同項を適用して執行猶予を付した原判決は、明白な法令違反にあたる。自判において検討するに、被告人を懲役1年に処し、情状特に憫諒すべきものと認めれば、1年以下の刑であるため、同条項に基づき執行を猶予することができる。
結論
原判決を法令違反に基づき破棄する。被告人を懲役1年に処し、刑法25条2項の要件を満たすため、4年間の執行猶予(および保護観察)を付す。
実務上の射程
再度の執行猶予(刑法25条2項)の限界を明確にする。実務上、初度の執行猶予(刑法25条1項)が「3年以下の懲役等」を対象とするのと異なり、再度の猶予は「1年以下」という極めて厳格な要件がある。答案上、併合罪加重等で刑期が1年を超える場合は、再度の執行猶予が法的不可能であることを指摘する際に用いる。
事件番号: 昭和29(さ)3 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
刑法第二五条第二項によれば、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、その執行を猶予された者が、一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け情状特に憫諒すべきものであるときは再び執行を猶予することができるのであるが、一年を超える懲役又は禁錮の言渡を受けたときは、その執行を猶予することはできないのである。しかるに原判決は前示の如…