欺罔手段によつて相手方の財物に対する支配権を侵害した以上、相手方が闇取引のため財物を交付したのであつても詐欺罪が成立するものであることは、当裁判所の判例とするところである。(集四巻七号一一六八頁、集四巻一二号二四七五頁)
いわゆる闇取引と詐欺罪
刑法246条
判旨
不法な闇取引の目的で財物が交付された場合であっても、欺罔手段により相手方の財物に対する支配権を侵害した以上、詐欺罪が成立する。
問題の所在(論点)
不法原因給付に類する闇取引において、欺罔手段を用いて財物を交付させた場合に、刑法246条1項の詐欺罪が成立するか。
規範
詐欺罪の成否について、交付の目的が公序良俗に反する不法なものであっても、欺罔行為によって相手方の占有を自己に移転させ、財物に対する支配権を侵害したといえる場合には、同罪が成立する。
重要事実
被告人が、被害者との間で闇取引(不法な取引)を行う過程において、欺罔手段を用いて被害者を誤信させ、その財物の交付を受けた。弁護人は、相手方が闇取引のために財物を交付した場合には、法的な保護に値せず詐欺罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
詐欺罪の保護法益は、個人の財産的利益のみならず、占有の態様を問わず財物に対する所持・支配そのものも含まれる。本件において、被告人は欺罔手段を用いることで、相手方の意思を瑕疵あるものとし、その財物に対する支配権を侵害している。取引の内容が闇取引という不法なものであっても、その事実によって財物の占有移転という侵害の事実が否定されるものではないため、詐欺罪の構成要件を充足するといえる。
結論
不法な闇取引のための財物交付であっても、詐欺罪は成立する。
実務上の射程
不法原因給付と財産罪の関係を示す重要判例である。民法上の不法原因給付(708条)に該当し返還請求ができない事案であっても、刑法上の保護が否定されるわけではないという「刑法独自の保護」の視点から答案を構成する際に引用する。
事件番号: 昭和26(あ)2705 / 裁判年月日: 昭和30年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪(刑法246条1項)の成立に必要な不法領得の意思は、自己のために利得する場合に限られず、第三者に利得させる目的であっても認められる。 第1 事案の概要:被告人が、地方事務所(公的機関・団体等)に対して不当な利益を得させる目的で、人を欺いて財物を交付させた事案。弁護人は、被告人自身に利得させる…