闇米を買つてやる意思がないのに、これがあるように偽つて、代金名義で金銭を騙取した以上、右金銭の授受が不法原因に基くものであつても、詐欺罪の成立を妨げない。
不法原因に基く給付と詐欺罪
刑法246条,民法708条
判旨
不法な闇取引を目的とした金員の授受であっても、相手方を欺いて財物を交付させた以上、刑法246条の詐欺罪が成立する。
問題の所在(論点)
不法な闇取引(米の闇売買)を目的として金員が交付された場合、いわゆる不法原因給付(民法708条)の法理との関係で、詐欺罪が成立するか。
規範
詐欺罪(刑法246条1項)の成否は、欺罔行為、錯誤、処分行為、及び財物の移転という一連の因果関係の有無によって決せられる。給付の原因が不法な目的(公序良俗違反等)に基づくものであっても、受領者に当初から給付内容を履行する意思がなく、相手方を欺いて財物を交付させた場合には、財産的秩序を侵害するものとして同罪を構成する。
重要事実
被告人は、被害者Aとの間で米の闇売買を行う合意をした。しかし、被告人には最初から米を買い受けて被害者に引き渡す意思はなかった。それにもかかわらず、被告人は「米を買ってやる」と被害者を欺き、その代金名目で金員を騙取した。
あてはめ
被告人は、米の闇売買という不法な取引を口実にしているが、実際には米を調達して引き渡す意思が全くないにもかかわらず、あたかもその意思があるかのように装って被害者を欺いている。この欺罔行為に基づき、被害者は錯誤に陥って代金という財物を交付(処分行為)しており、被告人のもとに財物が移転している。闇売買という目的の不法性は、被害者の占有を離脱させて自己の領得を図るという詐欺罪の構成要件該当性を妨げるものではない。
結論
被告人に米を買う意思がないにもかかわらず、米を買うと欺いて代金を騙取した以上、詐欺罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、民法上の不法原因給付に該当するような事案であっても、刑法上の保護に値する財産的利益の侵害があれば詐欺罪の成立を肯定する立場を明示している。答案上は、利息制限法超過の利息支払や、公序良俗に反する事務依頼の謝礼などを騙取する事案において、民事上の返還請求権の有無にかかわらず刑事上の詐欺罪が成立することを論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和25(れ)1240 / 裁判年月日: 昭和25年12月1日 / 結論: 棄却
他人名義の転出証明書を利用し、同人等と自己の同居人の如く虚偽の届出をし、自己の主食配給通帳にその旨の登載を受け食糧配給公団の係員に対し、恰も正当な同居人の配給を受けるものの如く装い、係員を欺きその配給を受けたときは詐欺罪が成立し食糧緊急措置令第一〇条本文の適用がないと解すべきである。