判旨
複数の罪が併合罪の関係にある場合、刑法10条2項に基づき刑の長期が長い方の罪を「最も重い罪」として処断すべきであり、これに反する法令適用は違法である。ただし、被告人の不利益を主張する上告は適法な理由にならず、直ちに判決破棄を要する著しい正義に反する場合(刑訴法411条)にも当たらない。
問題の所在(論点)
刑法10条2項における刑の軽重の判断基準と、併合罪の処断(刑法47条)において長期の短い罪を「最も重い罪」として選択する法令適用の誤りが、判決の破棄理由(刑訴法411条)となるか。
規範
同種の刑の軽重は、刑法10条2項に基づき、刑の「長期」が長いものを重いとする。また、併合罪(刑法45条)において刑を加重する場合(同47条)、最も重い罪の刑の長期にその2分の1を加えたものを全体の長期としなければならない。裁判所が誤って長期の短い罪を「最も重い罪」として処断することは法令違反となる。
重要事実
被告人は、偽造私文書行使罪と詐欺罪の併合罪に問われた。原審は、これら二罪を併合罪として処断する際、偽造私文書行使罪(当時の刑:3月以上5年以下)を詐欺罪(同:10年以下)より重い罪として選択し、その刑に刑法47条による法定の加重を行って判決を下した。これに対し、弁護人は法令適用の誤りを理由に上告した。
あてはめ
詐欺罪(長期10年)と偽造私文書行使罪(長期5年)を比較すると、刑法10条2項により詐欺罪の方が重い。したがって、原審が偽造私文書行使罪を重いとして処断した点には明らかな法令違反がある。しかし、本件上告は被告人の「不利益」を主張するものであり適法な上告理由に当たらない上、重い詐欺罪を基準とするよりも被告人に有利な結果となっている可能性も否定できず、この違法を放置することが「著しく正義に反する」とは認められない。
結論
原判決には刑の軽重に関する法令適用の誤りがあるが、上告人(被告人)にとって不利益な主張であり、かつ著しく正義に反する事態ともいえないため、上告は棄却される。
実務上の射程
併合罪の処断における刑の選択(刑法10条、47条)の基本原則を示す。答案上は、罪数論における処断刑の導出過程で、法定刑の長期を基準に重い罪を特定する際、この規範を当然の前提として活用する。また、刑訴法上の上告理由や判決破棄の要件に関する議論においても、被告人の不利益を主張する上告の不適法性を裏付ける材料となる。
事件番号: 昭和35(あ)2795 / 裁判年月日: 昭和37年5月17日 / 結論: その他
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一 昭和二二年法律第一二四號(刑法の一部を改正する法律)は刑法第五五條を削除したが同法律附則第四項により同法施行前の行爲については刑法第五五條の改正規定にかかわらずなお從前の例によることを定めておるのである。ところで被告人の本件犯罪行爲は右改正施行の日たる昭和二二年一一月一五日前に行われたものであつて公文書僞造の各所爲…
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