判旨
憲法38条3項が定める自白の補強証拠は、自白にかかる事実の真実性を保障するに足りるものであれば足り、犯罪事実の全部を直接証明するものである必要はない。
問題の所在(論点)
被告人が牛乳に青酸ソーダを混入して陳列棚に置いたという犯罪事実の認定において、証人の供述や空瓶等の物証が「自白の補強証拠」として適格性を有するか、すなわち補強証拠の程度が問題となった。
規範
自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、当該自白の真実性を保障するに足りるものであれば足りる。必ずしも犯罪構成要件に該当する事実のすべてを直接証明するものであることを要せず、自白と相まって犯罪事実を認定し得る程度の客観的な関連性があれば、補強証拠として許容される。
重要事実
被告人は、牛乳に青酸ソーダ約6グラムを混入して飲食店(B方)の食堂陳列棚の上に置き去ったとして起訴された。第一審判決は、この事実を被告人の自白に加えて、証人Bの供述記載、領置された牛乳の空瓶1本および紙蓋1枚の存在を根拠に認定した。これに対し、弁護人は自白以外の証拠が不十分であり、憲法38条3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、証人Bの供述や、現場から領置された牛乳空瓶および紙蓋といった客観的な証拠が存在する。これらの証拠は、被告人が自白した「牛乳への毒物混入および放置」という具体的態様を裏付けるものであり、被告人の自白が架空のものではなく真実であることを保障するに足りる。したがって、これらの証拠を補強証拠として自白と総合し、犯罪事実を認定した判断に憲法違反はない。
結論
被告人の自白の真実性を保障するに足りる補強証拠が存在するため、憲法38条3項違反の主張は採用できず、上告は棄却される。
実務上の射程
自白の補強証拠の程度について「真実性保障説」を維持するものである。実務上、自白の核心部分(犯行の態様等)と合致する客観的事実や目撃証言が存在すれば、それ自体が犯罪事実の全要素を立証できずとも補強証拠として認められることを示している。
事件番号: 昭和43(あ)66 / 裁判年月日: 昭和43年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】殺意のような主観的構成要件要素については、被告人の自白のみならず、判決に列記された他の証拠を総合して認定することができる。これにより、自白のみを証拠として有罪とすることを禁じた憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が殺人罪等の罪に問われた事案において、第一審判決は被告人の自白を証拠…