法定刑が同一である三四個の併合罪につき法定の加重をする場合において、刑法第四七条、第一〇条の適用を示しているときは、いずれの罪の犯情が最も重いかを判文に明示しなくても違法ではない。
犯罪の軽重を判示しないことが違法でない一事例
刑法45条,刑法47条,刑法10条,刑訴法335条1項
判旨
複数の罪の法定刑が同一である併合罪において、判決書にいずれの罪が最も重いか具体的に明示されていなくても、犯情により軽重を定めて加重した趣旨と認められるならば、法令適用の違法はない。
問題の所在(論点)
刑法47条に基づき併合罪加重を行う場合において、法定刑が同一である複数の罪のうち、いずれが「最も重い罪」(刑法10条)であるかを判決書に具体的に明記しなかった場合、法令適用の違法となるか。
規範
刑法47条および10条を適用する際、複数の罪の法定刑が同一である場合には、犯情によってその軽重を定め、そのうち最も重いと判断される罪の刑に法定の加重をすべきである。この際、判決書において具体的にいずれの罪が最も重い罪であるかを一見して明示していなくとも、判示全体の趣旨や摘示された事実から、最も重い罪を基準に加重したことが客観的に認められるのであれば、法令適用の不備としての違法は存しない。
重要事実
被告人は34回にわたる業務上横領の事実により起訴され、第一審判決ではこれらの事実を併合罪として認定した。第一審判決は、法令の適用として刑法45条前段、47条、10条を示していたが、34の罪のうちいずれの罪が最も重い罪であるかを具体的に特定して示していなかった。弁護人は、この点の明示がないことが法令違反であるとして上告した。
あてはめ
本件では、判示された34回の業務上横領罪の法定刑はすべて同一である。原判決が刑法47条および10条を引用していることは、これら同一の法定刑の中から犯情によって軽重を判断し、その最も重い罪の刑に加重したことを示した趣旨と解される。また、犯罪表を含む第一審判決の事実摘示によれば、そのうち特定の事実(犯罪表22)が犯罪の態様に照らして犯情が最も重い罪であると客観的に認められる。したがって、原判決はこの罪を基準に加重したものということができ、結論において誤りはない。
結論
判決書に最も重い罪の具体的な指定がなくても、判示事実等から犯情の最も重い罪に基づき加重したと認められる以上、法令違反には当たらない。
実務上の射程
併合罪加重における判決書の記載事項に関する射程を示すものである。法定刑が同一の数罪を処理する実務において、厳格な特定を欠いても、記録上犯情の軽重が明らかであり、加重のプロセスが実質的に正当化される場合には、判決の効力は維持される。答案上は、罪数論や刑の算定に関する手続的瑕疵の有無が問われた際、実質的な犯情判断の有無を重視する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)3204 / 裁判年月日: 昭和31年12月12日 / 結論: 棄却
昭和二七年九月着工、同年一二月完成するにいたつた自己の家屋の建築工事費を支払うため、前後一二回にわたり、その都度、公金をもつて支弁した事実があつても、最初から全部の横領を企図したものと認められないかぎり、横領罪は個々に成立し、併合罪と認めるべきである。