判旨
精神病質(異常人格)者であっても、知能の程度が正常であり、犯行当時における自己の行為の是非を弁別し、これに従って行動する能力が著しく減退していなければ、心神耗弱には当たらない。
問題の所在(論点)
被告人が精神病質(異常人格)である場合に、直ちに刑法39条2項の心神耗弱(限定責任能力)が認められるか、あるいは知能程度や具体的な弁別・制御能力の有無によって判断されるべきかが問題となる。
規範
刑法39条にいう心神耗弱とは、精神の障害により、事物の理非善悪を弁別する能力(弁別能力)またはその弁別に従って行動を制御する能力(制御能力)が著しく低い状態を指す。精神病質(異常人格)がある場合でも、知能の程度が正常であり、かつ当時の状況から判断して弁別・制御能力が著しく減退していたと認められない限り、限定責任能力は否定される。
重要事実
被告人は精神病質(異常人格)を有していた。一方で、被告人の知能の程度は正常であった。第一審および原審における鑑定書、ならびに司法警察員や検察官に対する各供述調書などの証拠によれば、犯行当時の被告人の状態が記録されていたが、これらによっても心神耗弱の状態にあったとは認定されなかった。
あてはめ
本件被告人は精神病質人ではあるものの、証拠によれば知能の程度は正常であると認められる。精神病質という性格の偏りがあったとしても、知能が正常であり、犯行当時の具体的な状況に照らして自己の行為を制御できないほどの精神障害があったとは認められない。したがって、弁別能力または制御能力が著しく低い状態にあったとはいえず、心神耗弱の要件を充足しない。
結論
被告人は、本件犯行当時心神耗弱の状態にあったとは認められない。
実務上の射程
精神病質(パーソナリティ障害)が責任能力に与える影響についての判断基準を示す。単なる性格の異常にとどまらず、弁別・制御能力に実質的な影響を及ぼしているか、特に知能程度等の他の要素も併せて総合的に判断すべきという実務上の運用を支える判例である。
事件番号: 昭和27(れ)34 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
一 刑法第二〇〇条の犯罪成立後従来の民事法規によれば直系尊属であつた者が、かりにその改正によりその身分を失うに至つたとしても、かかる場合を、犯罪後の法律によりその刑に変更があつたときということはできない。 二 日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律施行後も姻族関係は、夫婦の一方が死亡いただけでは消滅しない。
事件番号: 昭和30(あ)4004 / 裁判年月日: 昭和31年6月12日 / 結論: 棄却
妻を殺害したのと同一機会に、殺意をもつて妻の母にも加害したがその目的を遂げなかつた所為は、尊属殺人未遂罪にあたる。