妻を殺害したのと同一機会に、殺意をもつて妻の母にも加害したがその目的を遂げなかつた所為は、尊属殺人未遂罪にあたる。
妻を殺害し同一機会に更に妻の母を殺害せんとしたときと刑法第二〇〇条の罪責
刑法200条,民法728条2項
判旨
被告人が妻を殺害したのと同一の機会に、殺意をもって妻の母(義母)に対しても加害行為に及んだ場合、義母に対する罪責は(当時の刑法における)尊属殺人未遂罪として問擬される。
問題の所在(論点)
被告人が配偶者の直系尊属(義母)を殺害しようとした場合、(当時の)刑法における尊属殺人未遂罪が成立するか。
規範
配偶者の直系尊属(義父母等)が、刑法上の「尊属」に該当するか否か、および同一機会に複数の殺傷行為が行われた場合の罪責の決定。判例は、被告人の配偶者の実母に対する殺意に基づく加害行為について、尊属に対する犯罪(当時の尊属殺人未遂罪)の成立を肯定する。
重要事実
被告人は、自身の妻を殺害したのと同一の機会に、殺意をもって妻の実母(被告人から見て義母)に対しても加害行為に及んだが、殺害の目的を遂げなかった。原審は、妻の殺害とは別に、妻の母に対する行為を尊属殺人未遂罪(旧刑法200条、203条)として認定した。これに対し弁護側は、判例違反等を理由に上告した。
事件番号: 昭和28(あ)1126 / 裁判年月日: 昭和32年2月20日 / 結論: 破棄差戻
刑法第二〇〇条にいわゆる配偶者の直系尊属とは、現に生存する配偶者の直系尊属を指すものと解するを相当とする。
あてはめ
被告人が妻を殺害したのと同一の機会に、殺意をもって妻の母に加害した事実に鑑みれば、加害対象は被告人の配偶者の直系尊属である。判決文からは詳細な法解釈の展開は不明であるが、裁判所は、配偶者の直系尊属に対する加害行為について、通常の殺人未遂ではなく尊属殺人未遂罪を適用した原判決の判断を「正当」と評価した。これにより、義理の親子関係においても尊属殺に関する規定が適用されることが示された。
結論
被告人が妻の母に対して殺意をもって加害した行為は、尊属殺人未遂罪を構成する。本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決当時は尊属殺人罪(旧刑法200条)が存在したが、現在は憲法14条1項違反として削除されている(最大判昭48.4.4)。そのため、現代の司法試験答案においては、義父母が「直系尊属」に含まれるかという親族法上の論点や、尊属殺人規定の違憲性の文脈で参照される。現代の刑法上は、通常の殺人未遂罪(199条、203条)が適用されるため、実務上の直接の罪名判断としての射程は失われている。
事件番号: 昭和28(あ)2030 / 裁判年月日: 昭和30年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】尊属殺重罰規定である刑法200条(当時)は、法の下の平等を定める憲法14条および個人の尊厳・両性の本質的平等を定める憲法24条2項に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、尊属殺(当時の刑法200条)の罪に問われたが、同条が憲法14条(法の下の平等)および憲法24条2項(尊厳と平等に基づく家族法…
事件番号: 昭和26(あ)4480 / 裁判年月日: 昭和28年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】現行の死刑制度は憲法に違反するものではなく、過去の大法廷判決の趣旨に照らして合憲である。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、第一審において死刑を言い渡された。被告人側は、死刑制度自体が憲法に違反するものであると主張し、また量刑の不当や事実誤認、自白の任意性欠如などを理由に上告した。…