共同被告人として起訴された共犯者らと被告人との弁論が分離された結果、判決裁判所の裁判官が右共犯者らの公判審理により被告人に対する公判審理の開始前に被告事件の内容に関し予め知識を有していたからといつて、その裁判官のした審理判決が憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」でないということはできないことは当裁判所の判例(昭和二四年新(れ)第一〇四号、同二五年四月一二日、大法廷判決、集四巻四号五三五頁、昭和二八年(あ)第二三九二号同年一〇月六日第三小法廷判決、集七巻一〇号一八八八頁、昭和三一年(あ)第二一七八号、同年一一月二七日第三小法廷決定、集一〇巻一一号一五五八号)の趣旨に徴し明らかである。
他の共犯者に対する公判審理により被告事件の内容を予め知つていた裁判官の裁判と憲法第三七条第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」
憲法37条1項,刑訴法20条,刑訴法21条,刑訴法256条6項
判旨
共犯者の公判審理に携わった裁判官が、弁論分離後の被告人の公判を審理・判決することは、憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」の裁判に反しない。
問題の所在(論点)
共犯者の公判に関与した裁判官が、弁論分離後の被告人の公判を担当することが、憲法37条1項の定める「公平な裁判所」による裁判を受ける権利を侵害するか。
規範
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏見や予断を持つおそれのない、中立・公正な裁判所を指す。裁判官が共犯者の公判審理等を通じて被告事件の内容に関し予め知識を有していたとしても、それだけで直ちに裁判の公正を害するものとはいえず、制度的に「公平な裁判所」でないということはできない。
重要事実
被告人と共同被告人(共犯者)が起訴されたが、弁論が分離された。判決裁判所の裁判官は、被告人の公判審理が開始される前に、先行して行われた共犯者らの公判審理を担当していた。これにより、裁判官は被告事件の内容についてあらかじめ一定の知識を有することとなったが、被告人はこのことが憲法37条1項に違反すると主張した。
あてはめ
本件において、裁判官が共犯者の公判審理を通じて被告人の事件内容を予め把握していた事実は認められる。しかし、裁判官は個別の被告人ごとに証拠に基づき判断を行うものであり、共犯者の公判への関与から生じる知識は、裁判官の職務上不可避的に生じ得るものである。したがって、特定の予断や偏見が具体的に証明されない限り、事前の知識を有しているという一事をもって、客観的に不公平な裁判がなされるおそれがあるとはいえない。
結論
本件裁判官の審理判決は、憲法37条1項にいう「公平な裁判所」の裁判に反しない。よって、被告人の上告は理由がない。
実務上の射程
裁判官の除斥(刑訴法20条)や回避の対象となる「前審に関与した」等の限定的な事由に当たらない限り、共犯者の事件に関与した事実は不公平を基礎づけるものではない。司法試験の答案では、憲法37条1項の意義や刑訴法上の除斥・忌避の制度趣旨を論じる際の限界を示す判例として活用できる。
事件番号: 昭和49(あ)464 / 裁判年月日: 昭和52年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】対向犯の関係にある別個の被告事件の審判に関与した裁判官が、本件被告事件の審理判決に関与したとしても、憲法37条1項にいう「公平な裁判所」による裁判に反しない。 第1 事案の概要:被告人の贈賄被告事件を審理する原審裁判所において、裁判官2名が、本件と対向犯の関係にあるAの収賄被告事件の審判に既に関与…