原判決の判示は「被告人A、同Bと被告人Cとは、形式的に相対立的立場にあり、一見利害相反する如くであるが原審において右三名とも、各金二万円授受の事実を認めてその趣旨を否認し、被告人Cはたんにお歳暮として渡し、被告人A等もお歳暮に貰つたと全く同じ弁解をなし、主任弁護人も亦被告人Cは被告人A等のいずれからも、その職務に関して便宜の取扱を受けた事実なく被告人A等も被告人Cに対して職務上便宜の取扱をしてやつた事実は毛頭なく右金員は年末の儀礼的な土産物代にすぎないと主張し、各弁護人も各被告人に共通の弁論をなし同一結果を期待し、その弁護を相互に牴触することなく完全に遂行しており、一方に有利なことは必ず他方に不利となるものとは毫も認められないので原審における被告人A同Bと被告人Cとはその利害相反しないものといわねばならぬ……」というのである。ゆえに右被告人三名はその利害対立せず、各弁護人も私選弁護人としてそれぞれ有利の弁護をなし得るものと認められるから右原審の判断は正当であり違法とはいえない。
必要的共犯の関係にある贈収賄被告人等に同一弁護人による弁護をさせることと利害対立の有無
刑訴法30条,刑訴法31条,刑訴規則29条2項
判旨
複数の被告人を同一の弁護人が弁護する場合、形式的に対立する立場にあっても、実際の供述内容や弁論が共通の利益を追求し、相互に矛盾がない限り、憲法37条3項に反しない。
問題の所在(論点)
贈収賄事件のように形式的には対立する立場にある複数の被告人を同一の弁護人が弁護する場合において、実質的な利害の対立が認められないときでも、憲法37条3項の弁護人依頼権の侵害(利益相反)となるか。
規範
一人の弁護人が複数の被告人を弁護することが憲法37条3項の保障する弁護権の侵害にあたるか否かは、被告人相互の利害が実質的に相反するか否かによって決する。各被告人の弁解が同一であり、弁護人が各被告人に共通した利益となる弁論を行い、相互に抵触することなく完全に弁護の任務を遂行し得る場合には、利害相反にあたらず、憲法違反の問題は生じない。
重要事実
収賄側とされる被告人A・Bと、贈賄側とされる被告人Cの3名に対し、同一の弁護人が選任された。原審において、被告人3名は金員2万円の授受の事実は認めたものの、それが職務に関する便宜供与の対価ではなく、単なる「年末の儀礼的なお歳暮」であるとして、全く同一の弁解を行った。主任弁護人も、両者間に便宜供与の事実はなく土産物代わりであると主張し、各被告人に共通の利益となる弁論を展開した。
あてはめ
本件では、被告人らは授受の趣旨について「お歳暮である」との共通の弁解に終始している。弁護人の活動も、一方に有利な主張が他方に不利となる関係にはなく、実質上、全員に共通した利益な弁論として一貫していた。したがって、各被告人の防衛権は十分に確保されており、被告人相互に利害が対立しているとは認められない。
結論
本件の弁護活動は利害相反するものといえず、憲法37条3項の保障する弁護人による権利の保護を拒んだものとはいえない。
実務上の射程
共同被告人間に実質的な利害対立(責任のなすりつけ合い等)がない場合の共同弁護の合憲性を認めた射程を有する。答案上は、利益相反の有無を「供述内容の矛盾の有無」や「弁護方針の共通性」から具体的にあてはめる際の準拠となる。
事件番号: 昭和29(あ)121 / 裁判年月日: 昭和30年12月20日 / 結論: 棄却
一 本件起訴状に記載するような共犯関係においては、これをもつて直ちに当然両被告人は利害相反するということはできないから、第一審裁判書が公判進行の必要上当面の急に応じ同一弁護人を選任したこと自体をもつて、直ちに公正な弁護権の行使を妨げる違法な処置ということはできない。 二 被告人は第一審相被告人と共謀の上詐欺を行つたとい…