いわゆる想像的競合犯中の一部を無罪と認める場合には、判決の主文においてその言渡をなすべきではないけれども、理由中でその判断を示すことは必要である。
いわゆる想像的競合犯中の一部を無罪と認める場合その判断を判決理由に示すことの要否
刑法54条,刑訴法44条,刑訴法335条,刑訴法336条
判旨
想像的競合の関係にある数罪の一部について無罪と判断する場合、主文で無罪を言い渡すべきではないが、理由中でその判断を示す必要があり、確定すれば無罪部分にも既判力が及ぶ。
問題の所在(論点)
一個の行為が複数の罪名に触れる想像的競合の関係にある場合、その一部について無罪と判断する際に主文で無罪を宣告すべきか。また、理由中での判示の要否および既判力の範囲が問題となる。
規範
科刑上一罪(想像的競合犯等)の関係にある数罪のうち、一部について犯罪の証明がないと認める場合、判決の主文において無罪を言い渡すべきではない。もっとも、理由中においてその旨の判断を示すことは必要である。当該判決が確定すれば、理由中で無罪と判断された部分についても既判力(一事不再理効)が発生する。
重要事実
被告人が公務執行妨害罪と他の罪(判決文からは罪名不明)に問われた事案において、第一審判決は理由中で公務執行妨害の点について特段の判示をしていなかった。原判決は、これを「証拠がないと判断したもの」と推認して維持したため、被告人側が主文で無罪が言い渡されていないことや理由不備を不服として上告した。
あてはめ
本件では、被告人の行為について公務執行妨害罪の成立が否定されるべき状況にあった。科刑上一罪の場合、一部が有罪であれば主文はその有罪の刑のみを掲げるため、無罪部分を主文に記載することは適切でない。しかし、審判対象となった事実についての判断を明確にするため、理由中で無罪の旨を判示する義務がある。第一審は理由中の判示を欠いていたが、原判決が「証拠不足による無罪」との判断を補足しており、これにより公務執行妨害の点についても既判力が及ぶことが保障されている。
結論
想像的競合の一部の無罪は主文に掲げるべきではないが、理由中での判示が必要である。本件では原判決の補足により既判力が及ぶため、原判決を破棄するまでもない。
実務上の射程
司法試験においては、訴因が複数(科刑上一罪)ある場合の判決主文の書き方や、一部無罪の際の既判力の及ぶ範囲(一事不再理効)を論じる際の根拠として用いる。特に理由中で無罪と判断された事実にも既判力が及ぶとする点は、二重処罰禁止の観点から重要である。
事件番号: 昭和31(れ)16 / 裁判年月日: 昭和32年7月18日 / 結論: 棄却
一 前夜岡山県下で強盗を行つて得た賍物を舟で運搬し、翌晩神戸で陸揚げしようとする際巡査に発見され、逮捕を免れるため暴行を加え、これを傷害した所為は、強盗傷人ではなく、強盗と公務執行妨害、傷害との罪が成立する。 二 牽連犯が成立するためには犯人が主観的に数罪の一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは…