一 前夜岡山県下で強盗を行つて得た賍物を舟で運搬し、翌晩神戸で陸揚げしようとする際巡査に発見され、逮捕を免れるため暴行を加え、これを傷害した所為は、強盗傷人ではなく、強盗と公務執行妨害、傷害との罪が成立する。 二 牽連犯が成立するためには犯人が主観的に数罪の一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上通常手段結果の関係が存在することを必要とする。
一 強盗傷人とならない一事例 二 牽連犯の要件
刑法240条,刑法238条,刑法236条,刑法95条,刑法204条,刑法54条
判旨
牽連犯(刑法54条1項後段)が成立するためには、犯人の主観において一方の罪が他方の罪の手段・結果の関係にあるだけでなく、客観的にもその数罪間に罪質上通例そのような関係が存在することを要する。
問題の所在(論点)
数罪が刑法54条1項後段の牽連犯として処断上一罪となるための要件、特に「手段の結果」の関係は、主観的な目的関係のみで足りるか、それとも客観的な罪質上の関係を要するか。
規範
牽連犯が処断上一罪とされる理由は、数罪間に罪質上通例一方が他方の手段または結果となる関係があり、犯人が具体的にもその関係で実行した場合には、重い方の刑で処断すれば足りると認められる点にある。したがって、その成立には、犯人が主観的に手段・結果の関係で実行したのみでは足りず、数罪間に「その罪質上通例手段結果の関係が存在すること」が必要である。
重要事実
被告人は岡山県において強盗を行い、その翌日、当該強盗による贓物を舟で運搬して神戸で陸揚げしようとした際、準強盗傷人に当たる行為(本件犯行)に及んだ。被告人側は、既に確定判決を経た強盗罪と本件犯行が連続犯または牽連犯の関係にあるとして、免訴を主張して上告した。
あてはめ
本件における強盗罪と、その翌日に別個の機会に行われた贓物運搬等の過程での準強盗傷人罪(本件犯行)について検討するに、両者は時期・場所・態様を異にしている。また、強盗罪と準強盗傷人罪との間には、その罪質上、通常一方が他方の手段または結果となる関係にあるとは認められない。したがって、被告人が主観的にいかなる意図を有していたとしても、客観的な罪質上の関連性を欠くため、牽連犯は成立しない。
結論
本件犯行と前日の強盗罪は牽連犯の関係にはなく、併合罪として処理される。したがって、先行する強盗罪の確定判決の効力は本件には及ばず、免訴すべきとの主張は認められない。
実務上の射程
科刑上一罪(牽連犯)の判断枠組みとして、主観的態様のみならず「客観的・類型的な罪質上の関連性」を要求する極めて重要な判例である。答案上は、まず犯人の主観的な目的関係を指摘し、次いで、住居侵入と窃盗のような『罪質上の通常の関係』があるか否かを論じる際の必須の基準となる。
事件番号: 昭和29(あ)3573 / 裁判年月日: 昭和32年2月14日 / 結論: 棄却
刑法第五四条第一項前段にいわゆる「其最モ重キ刑ヲ以テ処断ス」とは、その数個の罪名中もつとも重い刑を定めている法条によつて処断するという趣旨を含むと共に、該法条の下限の刑が他の法条の下限の刑より軽い場合には、各本条の中もつとも重い下限の刑よりも軽く処断することはできないという趣旨を含むものと解するのが相当である。