本件訂正申立趣意第一点は、判決書に表示された被告人の本籍並びに住居の地番及び生年月日の訂正を求めるものであり、同第二点は判決書に「公判期日に出席した検察官の官氏名の記載」(刑訴規則五六条二項)がないから無効であるとしてその訂正を求めるというのであつて、いずれも判決の内容に誤のあることを理由とするものでなく、刑訴四一五条一項の要件を欠くものである。(なお右判決は刑訴四〇八条により弁論を経ないで上告を棄却したものであるから、判決書にはその宣告期日に出席した検察官の官氏名の記載はこれを必要としないものと解すべきである)。
一 被告人の本籍、住居、生年月日の訂正申立と刑訴第四一五条第一項 二 判決書に「公判期日に出席した検察官の官氏名の記載」を欠き無効であるとしてその訂正を求むる申立と刑訴第四一五条第一項
刑訴法415条1項
判旨
判決訂正の申立て(刑訴法415条1項)は、判決の内容に誤りがあることを理由とする場合に限り認められ、被告人の特定事項や検察官の官氏名記載の不備はこれに当たらない。また、刑訴法408条により弁論を経ないで上告を棄却する場合、判決書に宣告期日に出席した検察官の官氏名を記載する必要はない。
問題の所在(論点)
被告人の本籍・住居等の記載の誤りや、検察官の官氏名の記載漏れが、刑訴法415条1項にいう「判決の内容に誤りのあること」に該当するか。また、弁論を経ない上告棄却判決において検察官の官氏名の記載は必要か。
規範
刑訴法415条1項に基づく判決訂正の申立ては、「判決の内容に誤りのあること」を要件とする。ここでいう「内容の誤り」とは、事実誤認や法令適用の誤りといった実体的な判断の誤りを指し、形式的な記載事項の不備は含まれない。また、刑訴規則56条2項が要求する検察官の官氏名記載は、弁論を経ない上告棄却判決(刑訴法408条)においては適用されない。
重要事実
事件番号: 昭和30(す)47 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: 棄却
刑訴第四一四条、第三八六条第一項第三号により上告を棄却した最高裁判所の決定に対しては、同第四一四条、第三八六条第二項により異義の申立をすることができるが、訂正の申立をすることは許されない。
被告人が、最高裁判所による上告棄却判決に対し、判決訂正の申立てを行った。申立人は、①判決書に記載された被告人の本籍、住居、生年月日の地番等に誤りがあること、②判決書に公判期日に出席した検察官の官氏名の記載(刑訴規則56条2項)がなく無効であることを理由として、判決の訂正を求めた。なお、当該上告棄却判決は、刑訴法408条に基づき弁論を経ずになされたものであった。
あてはめ
第一に、被告人の本籍、住居、生年月日の訂正を求める点は、判決の内容そのもの(実体判断)に誤りがあることを理由とするものではない。第二に、検察官の官氏名の記載欠如を理由とする点についても、判決内容の誤りには当たらない。特に本件は刑訴法408条に基づき弁論を経ずに上告を棄却したものであるから、判決書に宣告期日に出席した検察官の官氏名を記載する必要はないと解される。したがって、いずれも刑訴法415条1項の要件を欠く。
結論
本件各申立理由は刑訴法415条1項の要件を欠くか、あるいは訂正すべき事由とは認められないため、申立てを棄却する。
実務上の射程
判決訂正の申立ては、法令の解釈誤りや重要な事実の看過といった「実体的な誤り」に限定され、表示の誤りや形式的要件の不備を争う手段としては極めて限定的であることを示す。答案上は、判決訂正制度の趣旨(既判力の例外)を踏まえ、厳格に解釈する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和45(み)6 / 裁判年月日: 昭和45年4月28日 / 結論: 棄却
判決に反対意見を付した裁判官が、判決訂正申立棄却決定にも同一反対意見を付した事例。
事件番号: 昭和43(み)6 / 裁判年月日: 昭和43年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法417条1項に基づく判決訂正の申立について、判決の内容に誤りがないと認められる場合には、申立を棄却する。 第1 事案の概要:申立人は、公職選挙法違反被告事件についてなされた最高裁判所の上告棄却判決(昭和43年4月3日宣告)に対し、内容に誤りがあるとして判決訂正の申立を行った。 第2 問題…
事件番号: 昭和30(す)37 / 裁判年月日: 昭和30年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がした上告棄却の「決定」に対しては、判決の訂正の申立て(刑事訴訟法415条1項準用)をすることは許されず、また異議の申立て(同法414条、385条2項等)としても期間経過後は不適法となる。 第1 事案の概要:被告人に対する公職選挙法違反事件において、最高裁判所が昭和30年2月4日に上告棄…
事件番号: 昭和30(す)198 / 裁判年月日: 昭和30年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が刑訴法414条、386条1項3号に基づき上告を棄却した決定に対しては、同法415条に基づく判決の訂正の申立をすることは許されない。 第1 事案の概要:最高裁判所は、刑訴法414条、386条1項3号に基づき、申立人の上告を棄却する決定を下した。これに対し、申立人は当該決定の訂正を求めて申…