原審(簡易裁判所)が、本件の窃盗と鉄砲刀剣類等所持取締令違反とを刑法四五条の併合罪と認めた以上、前者につき懲役三年以下を言い渡し、後者につき罰金刑を選択して言い渡すべきものとするならば格別、しからずして、後者につき懲役刑を選択し、重い前者の法定懲役刑に併合罪の加重をした刑期範囲内において被告人に対し一個の懲役刑を言い渡すのを相当と認めたのであるから、原審としてはすべからく裁判所法三三条三項、刑訴法三三二条により事件を管轄地裁に移送する決定をなすべきものであつた。しかるに原審はこれをしないで自から一個の懲役刑を言渡したのであるから、原審の審判は裁判所法三三条二項に違反するものというのほかない。本件上告は理由がある。
簡易裁判所が裁判所法第三三条第三項の制限を超えて懲役刑を言渡した判決の違法と非常上告
裁判所法33条,刑訴法332条,刑訴法458条1号
判旨
簡易裁判所は、裁判所法33条2項但書に規定のない罪について禁錮以上の刑を選択し、かつ他罪との併合罪として処断することはできず、制限を超える刑を科す必要がある場合は地方裁判所に移送しなければならない。
問題の所在(論点)
簡易裁判所が、裁判所法33条2項但書に列挙されていない罪(銃砲刀剣類等所持取締令違反)について懲役刑を選択し、他罪との併合罪として一括して懲役刑を科すことは、同条の管轄権・権限の制限に違反するか。
規範
簡易裁判所は、原則として禁錮以上の刑を科すことができない(裁判所法33条2項)。ただし、同項但書所定の特定事件(窃盗罪等)については3年以下の懲役を科し得るが、但書に規定のない罪については、刑法54条1項の科刑上一罪の関係にない限り、禁錮以上の刑を選択して言い渡すことはできない。これに反して制限を超える刑を科すべきと認める場合は、同条3項及び刑事訴訟法332条に基づき、管轄地方裁判所へ事件を移送しなければならない。
重要事実
事件番号: 昭和32(さ)1 / 裁判年月日: 昭和32年3月26日 / 結論: 破棄自判
裁判所法三三条一項によれば簡易裁判所は窃盗及び傷害の罪について裁判権を有するが、同条二項によつて但書の場合を除いて禁錮以上の刑を科することができないことになつており、傷害罪につき懲役刑を選択し窃盗罪と併合加重をして懲役刑を言渡すことはできないことが明らかである。簡易裁判所がそのような処断を相当であると認めれば同条三項、…
被告人は、(1)倉庫から大豆を窃取した窃盗罪、及び(2)正当な理由なく匕首を携帯所持した銃砲刀剣類等所持取締令違反の罪に問われた。一審の簡易裁判所は、(1)と(2)を刑法45条の併合罪と認定した上で、(2)について懲役刑を選択し、より重い(1)の窃盗罪の刑に併合罪加重を行った範囲内で、被告人を懲役1年(執行猶予4年)に処する判決を言い渡し、確定した。
あてはめ
銃砲刀剣類等所持取締令違反は裁判所法33条2項但書に規定された特定事件に含まれない。したがって、簡易裁判所が同罪について懲役刑を選択した以上、もはや簡易裁判所自ら判決を言い渡すことはできず、地方裁判所へ移送すべきであった。それにもかかわらず、併合罪加重による一個の懲役刑(1年)を科した原審の審判は、法が定める簡易裁判所の刑の制限に違反しており、法令違反があるといえる。
結論
原判決は裁判所法33条2項に違反し被告人に不利益であるため破棄される。最高裁は自判し、銃砲刀剣類等所持取締令違反について罰金刑を選択した上で、懲役6月及び罰金3000円(執行猶予付)に処した。
実務上の射程
簡易裁判所の事物管轄および科刑権限の限界を示す射程の長い判例である。答案上は、併合罪の一部に簡易裁判所の科刑制限(原則として禁錮以上不可、特定事件のみ3年以下懲役可)を超える罪が含まれる場合の処理として、裁判所法33条及び刑訴法332条の適用の要否を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和24(そ)5 / 裁判年月日: 昭和24年9月24日 / 結論: 破棄自判
裁判所法第三三條第二項によれば、簡易裁判所は刑法第二三五條の罪若しくはその未遂罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第五四條第一項の規定によりこれらの罪の刑を以て處斷すべき事件以外の事件については、禁錮以上の刑を科することができないことになつて居り、又同條第三項によれば若しその制限を超える刑を科するを相當と認め…
事件番号: 昭和29(さ)1 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 破棄自判
刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条によれば、傷害罪の罰金の多額は二万五千円であるから、原判決が罰金三万円を言渡したのは、刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条の適用を誤り、法定刑を超える罰金刑を言渡した違法があるものといわなければならない。そして原判決は明らかに被告人のため不利益であるから、刑訴四五八条一項但書により、原判…
事件番号: 昭和28(あ)5511 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法定刑の範囲内で被告人に実刑を科し、執行猶予を付さなかったとしても、直ちに憲法13条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人に対し、下級審が法定刑の範囲内で実刑判決を言い渡し、執行猶予を付さなかった。これに対し弁護人は、実刑を科し執行猶予を付さないことは憲法13条(個人の尊厳・幸福追求権…
事件番号: 昭和29(あ)2250 / 裁判年月日: 昭和31年7月4日 / 結論: 棄却
厚判決が刀剣類の不法所持と殺人未遂との間には通常手段結果の関係にあるとはいえないから、本件短刀の不法所持と殺人未遂とを牽連犯と認めることはできないとして、これを併合罪として処断したのは正当である。