勾留が不当であるとしても、その一事を以て勾留中の供述調書が強制に基づくものであり又は任意性を欠くものであるといえないことは、当裁判所の判例の趣旨とするところである。(判例集九巻四号六六三頁以下大法廷判決、同四巻九号一七五一頁以下当法廷判決参照)
不当勾留中の供述調書の任意性
憲法38条1項,刑訴法319条
判旨
不当な勾留がなされている場合であっても、その一事のみをもって直ちに勾留中の自白が強制に基づくもの、あるいは任意性を欠くものと解することはできない。
問題の所在(論点)
不当な勾留(抑留・拘禁)の状態にある際になされた自白について、その不当性の存在のみをもって直ちに自白の任意性が否定されるか(憲法38条2項、刑訴法319条1項の解釈)。
規範
自白の証拠能力について、憲法38条2項及び刑訴法319条1項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白、又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑いのある自白の証拠能力を否定する。しかし、仮に勾留の決定や手続自体に不当な点があったとしても、その事実のみから直ちに当該自白が心理的強制に基づくものであるとか、供述の自由を制限してなされた任意性のないものであると断定することはできない。
重要事実
被告人Aは、自身に対する勾留が不当であると主張し、そのような不当な勾留期間中になされた供述調書は、強制に基づき、または任意性を欠くものであるとして、その証拠能力を争い上告した。なお、具体的な勾留の態様や自白に至る詳細な経緯については判決文からは不明である。
あてはめ
弁護人は、勾留が不当であるからその間の供述は任意性を欠く旨を主張する。しかし、自白の任意性は、供述がなされた際の具体的な状況、取調べの態様、供述者の身体的・精神的状態等を総合的に考慮して判断されるべきものである。単に勾留手続に不当な点があるという一事をもって、それだけで供述の自由が不当に制限された(強制があった)と評価することは、当裁判所の判例の趣旨に照らして認められない。
結論
勾留が不当であるとしても、その一事をもって勾留中の供述調書が当然に任意性を欠くとはいえない。したがって、原判決の判断に憲法違反や違法はない。
実務上の射程
自白の任意性が争われる場面において、勾留等の身分拘束の適法性と自白の証拠能力を峻別した判例である。答案上は、違法な抑留・拘禁後の自白(刑訴法319条1項)が問題となる際、拘束の違法性が直ちに任意性を否定するのではなく、その違法な拘束が供述の自由を制約する心理的強制として機能したかという観点から論じる際の否定例として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)2858 / 裁判年月日: 昭和33年3月25日 / 結論: 棄却
一 取引高税印紙は印紙犯罪処罰法第二条にいう「印紙」にあたる。 二 印紙犯罪処罰法第二条第一項前段にいう偽造、変造等にかかる印紙の「使用」とは、必ずしも、納税の用に供するため印紙本来の用法に従つてこれを使用する場合に限らず、これを債務の担保に供し、または金融のため譲渡する等広く真正の印紙としての効用を発揮させるため情を…
事件番号: 昭和29(あ)270 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、勾留延長の手続の適法性や、自白強要の形跡、証拠同意の有無等の諸事情を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人Aは、昭和27年2月1日に逮捕、同月4日に勾留され、同月22日まで勾留延長された後、同日に起訴され…