判旨
税関係員がその職務に関し作成する輸出証明書は、関税法や物品税法等の諸規定に基づき作成されるものである以上、刑法上の「公文書」に該当する。また、実際には輸出の確認がなされていないにもかかわらず輸出の事実を確認する内容の証明書を作成した場合は、虚偽公文書作成罪が成立する。
問題の所在(論点)
関税法等に基づき税関係員が作成する「輸出証明書」が刑法上の公文書に該当するか、また、輸出の事実がないのにこれを確認する内容を記載することが虚偽公文書作成罪を構成するか。
規範
刑法156条にいう「公務員がその職務に関し」作成すべき文書(公文書)とは、法令に基づき公務員がその権限内において作成する文書を指す。また、文書の内容が客観的事実に反する場合には、当該文書に証明力がある事項について虚偽の記載をしたものとして虚偽公文書作成罪が成立する。
重要事実
被告人Bは、免税承認を受けたカメラ約800個を輸出せず国内で横流しし、あるいは国内で旅行者に売却した。しかし、税関係員によって、当該物品が輸出されたことを確認する旨の内容が記載された輸出証明書が作成され、これが行使された。この輸出証明書は、関税法、同法施行令、物品税法、同法施行規則、あるいは国税庁長官通達等に基づき、税関係員が職務上作成するものであった。
あてはめ
本件の輸出証明書は、関税法や物品税法等の諸規定および国税庁の通達・訓令に基づき、税関係員がその職務として作成する文書である。したがって、これは公務員が職務上作成する公文書に該当する。本件では、真実は輸出の確認がなされた形跡がなく、実際には物品が国内で横流し等されていたにもかかわらず、輸出の事実を確認する内容の証明書が作成されている。これは、職務上作成すべき文書に実体に反する虚偽の事実を記載したといえる。
結論
本件輸出証明書は刑法上の公文書にあたり、虚偽の事実を記載してこれを行使した行為について、虚偽公文書作成罪および同行使罪が成立する。
実務上の射程
公務員が法令だけでなく通達や訓令等の内部規定に基づき職務として作成する証明書であっても、広く「公文書」に含まれることを示した事例である。答案上は、公文書の意義を「公務員が職務上作成する文書」と定義した上で、根拠法令や通達の存在から職務性を肯定する流れで活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)153 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)の客体である「公務員がその職務に関し作成すべき文書」とは、公務員が職務権限に基づき作成する文書全般を指し、その内容や形式は限定されない。 第1 事案の概要:被告人が関与した特定の文書(本件文書)について、これが刑法156条に規定される「公務員の職務に関する文書」に該…
事件番号: 昭和32(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)等における「公文書」とは、公務員がその職務上作成すべき文書を指し、その形式や名称の如何を問わず、実質的に公務員の職務権限に基づき作成されたものであればこれに該当する。 第1 事案の概要:本件は、被告人らが共謀し、公文書を偽造(虚偽記載)し、これを行使したとして虚偽公…
事件番号: 昭和31(あ)17 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
A法務社岸和田支局またはB地方法務新聞宇治山田支局各名義の各船舶登記証書を作成した場合においても、A法務社岸和田支局なる印の「社」およびB地方法務新聞宇治山田支局之印なる印の「新聞」という各文字の処を殊更に不鮮明に押捺し、各その形式外観によつて、一般人をしてA法務局岸和田支局またはB地方法務局宇治山田支局が権限により作…
事件番号: 昭和25(れ)1375 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 破棄自判
一 経済関係罰則の整備に関する法律第一条の規定と対比して見ると、同条は別表甲号に掲げる経済団体の「役員其ノ他ノ職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス」旨を規定しているが同第二条には、かかる規定は存在しない。すなわち、以上各規定の趣旨からみれば、右別表甲号、乙号掲記の経済団体の職員はいずれも本来…