外国為替及び外国貿易管理法二二条は、本邦居住者に対し、政令の定める所により本件ドル表示小切手の如き対外支払手段等を、日本銀行等に売却する義務即ち集中義務を課して居るけれども、同法第二五条は、同二二条の適用範囲を制限し、外国に在る間の取引に因り外国の銀行になした預金については、日本の管理法令を適用しない旨を規定し、同法又は同法に基く命令の規定を受ける取引に因り取得したものに限り同二二条の集中業務を課して居るのである。
外国為替及び外国貿易管理法第二二条と第二五条との関係。
外国為替及び外国貿易管理法22条,外国為替及び外国貿易管理法25条
判旨
専門的知識を有する者が特別の知識に基づき経験した事実を供述する場合、その者は刑事訴訟法174条の鑑定証人に当たり、証人に関する規定が適用されるため、証人として宣誓させた上でなされた供述には証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
専門的知識を有する者が、その知見に基づき経験した事実を供述する場合、いかなる法的性質を有し、証拠能力が認められるか(鑑定証人の意義)。
規範
刑事訴訟法174条にいう「特別の知識によつて知り得た過去の事実」を供述する鑑定証人とは、専門的な知識・経験を有する者が、その知識に基づき具体的な事実を認識・経験した場合を指す。この場合、同条により証人に関する規定が準用されるため、受訴裁判所が証人として宣誓をさせた上で供述を得ることは適式であり、その供述は証拠能力を有する。
重要事実
被告人は、外国為替及び外国貿易管理法(外為法)22条に基づく外貨集中義務に違反したとして起訴された。原審において、大蔵事務官として外為法関係の立案改正に従事する専門家であるAが証人として出廷し、問題となっている告示等の改廃事実、改廃の理由、および本法違反の実情について供述した。弁護人は、Aの供述は証拠能力がないと主張して上告した。
事件番号: 昭和31(あ)4601 / 裁判年月日: 昭和32年10月11日 / 結論: 棄却
一 外国にある弗預金を取得した代償として本邦の居住者に対して基準外国為替相場を超える支払をした場合は、外国為替及び外国貿易管理法第二八条と同法第七条第六項違反の罪が成立し、両者は観念的競合になる。 二 国外に去ることが明らかな参考人の検察官面前調書であつても証拠能力を失うものではない。
あてはめ
本件証人Aは、大蔵省為替局企画課において法令の立案改正に従事する専門家であり、外為法関係の管理事務について専門的知識を有する。Aが供述した告示の改廃事実やその理由、違反の実情といった事実は、Aがその専門的知識に基づき認識した過去の事実であるといえる。したがって、Aは刑訴法174条の鑑定証人に該当し、原審が証人としての宣誓をさせた手続は同条に基づく適法なものである。ゆえに、Aの供述は適法な証拠調べを経たものとして証拠能力が認められる。
結論
Aは鑑定証人に当たり、証人としての宣誓手続を経てなされた供述の証拠能力は否定されない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
実務上、法解釈や制度運用の背景を知る官僚や専門家の証言を「鑑定証人」として取り込む際の根拠となる。答案上は、単なる意見(鑑定)と、専門的知見に基づく事実(鑑定証人)を区別し、刑訴法174条の適用を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和37(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の委任に基づき政令で罰則(犯罪構成要件および刑)を設けることは憲法73条6号但書により許容される。また、不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項)に該当するかは、身柄拘束の経緯、事案の複雑性、自白の時期等を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は外国為替及び外国貿易管理法違反の罪に…
事件番号: 昭和38(あ)2629 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が基本的な規制を概括的に規定し、具体的な犯罪構成要件の細目を政令に委任することは、特に経済統制法規のような専門的・流動的な分野においては憲法73条6号但書、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、外国為替及び外国貿易管理法(当時)27条1項3号に違反して、許可を受けずに非居住者のた…
事件番号: 昭和37(あ)906 / 裁判年月日: 昭和38年12月4日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第二項第一号は、非居住者が同号記載の費用を支弁するため本邦通貨で支払う場合を規定したものと解すべきである(昭和三六年(あ)第二五四三号同三七年一二月一八日第三小法廷決定、刑集一六巻一二号一七〇六頁参照)。
事件番号: 昭和33(あ)1452 / 裁判年月日: 昭和34年2月5日 / 結論: 棄却
本邦人以外の居住者が、自己が外国において有する外国銀行預金にもとづいて、本邦内で小切手を振出した場合も、外国為替等集中規則第三条第一項にいう対外支払手段の「取得」にあたる。