記録に編綴されている国選弁護人選任書の案に裁判長の押印がないからといつて、そのことだけで、ただちに原本に裁判長の押印がなかつたということはできない。
記録に編綴されている国選弁護人選任書の案に裁判長の押印がない場合
刑訴法38条1項,刑訴規則29条1項,刑訴規則55条2項,刑訴規則58条1項
判旨
科刑上一罪の関係にある事件において、被告人がその一部の罪名のみを掲げて控訴を申し立てた場合であっても、当該事件は不可分一体の関係にあるため、全部が控訴審に移審する。
問題の所在(論点)
牽連一罪の関係にある複数の罪のうち、被告人が一部の罪名のみを指定して控訴を申し立てた場合、控訴審の移審の範囲および審判対象はどのように解すべきか。
規範
科刑上一罪(刑法54条1項後段)の関係にある複数の被告事件は、訴訟手続上も不可分一体の関係にある。したがって、その一部について控訴が申し立てられたときは、当然に他の被告事件も共に移審し、控訴審の審判対象となる。
重要事実
被告人は、第一審において住居侵入罪および窃盗罪の事実により有罪判決を受けた。第一審判決は、両罪が刑法54条1項後段の牽連一罪の関係にあるとして処断した。被告人はこの判決を不服とし、「窃盗被告事件に付」控訴を申し立てる旨の書面を提出した。原審(控訴審)は、住居侵入罪および窃盗罪の両罪について審判を行ったため、被告人は「控訴を申し立てていない住居侵入罪について審理したことは刑事訴訟法357条の解釈を誤った違法がある」として上告した。
あてはめ
本件における住居侵入罪と窃盗罪は、第一審判決において牽連一罪と認定されており、科刑上一罪として処断されている。このような場合、実体法上の罪数関係に基づき、訴訟手続においても両罪は不可分一体のものとして扱われる。したがって、被告人が控訴申立書において「窃盗被告事件」のみを掲げたとしても、それは便宜上の記載にすぎず、不可分一体である住居侵入被告事件も当然に控訴審に移審する。ゆえに、原審が両罪について審判したことに刑事訴訟法上の違法は認められない。
結論
科刑上一罪の関係にある事件の一部について控訴がなされたときは、事件の全部が移審する。したがって、原審が住居侵入・窃盗の両罪について審判したことは正当である。
実務上の射程
上訴不可分の原則(移審の範囲)に関する基礎的な判例である。科刑上一罪(牽連一罪・観念的競合)の場合、一部についての控訴であっても全部が移審することを論証する際に用いる。ただし、併合罪(刑法45条)の場合とは結論が異なる可能性がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和27(あ)4943 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
現行刑法において住居侵入罪と窃盗罪とはその被害法益及び犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行為は窃盗罪の要素に属せず、別個独立の行為であり、しかも通常、右両罪の間には手段結果の関係があることが認められるから、第一審判決が両罪を刑法五四条一項後段のいわゆる牽連犯として取扱つたのは正当である。
事件番号: 昭和23(れ)55 / 裁判年月日: 昭和23年4月6日 / 結論: 棄却
原判決が第一事實として判示した窃盗の事實については檢察官から適式の書面による公訴が提起されたことは記録上認められないことは所論のとおりであるが、原審は、右窃盗の事實は原判示第二事實の強盗未遂の事實と連續犯の關係あるものとして、言いかえれば適式に公訴の提起された強盗未遂罪と一罪の關係あるものとして審判したのであるから、原…