判旨
数人が共同して賄賂を収受した場合において、各共犯者から追徴すべき額は、賄賂として得た利益の総額ではなく、各人が実際に分配を受け占有した個別額を基準として算定すべきである。
問題の所在(論点)
数人が共同して賄賂を収受した場合において、没収に代わる追徴の範囲をどのように決定すべきか。共犯者全員に対して賄賂の全額を連帯して、あるいは各人に全額を追徴すべきか、それとも分配額に応じるべきかが問題となる。
規範
共同収賄罪において、収受した賄賂が没収不能な場合に追徴すべき金額は、原則として各共犯者が実際に分配を受け、自己の取得に帰した金額を基準として算定する。
重要事実
被告人AおよびBは、共同して賄賂を収受した。第一審判決が挙げた証拠によれば、事案(一)において被告人Aは5万5000円、Bは4万5000円を分配取得し、事案(二)においてAは15万5000円、Bは4万5000円を分配取得した事実が認められた。原審は、この分配額に基づき、各自の単独収賄分を加算した金額をそれぞれに対して追徴する旨の判決を言い渡したため、弁護人がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件では、証拠により被告人各人が賄賂から具体的にいくらの分配を受けたかという事実(分配額)が明確に判明している。追徴は本来、不法な利益を剥奪することを目的とする制度であるから、各自が実際に取得した金額が特定されている以上、その分配額を基準として追徴額を算定するのが相当である。被告人両名に対し、各自の受領した実額を基準として追徴を命じた原判決の算定手法は、追徴制度の趣旨に照らし適法といえる。
結論
共同収賄における追徴額は、各共犯者の分配額が明らかな場合には、その分配取得した実額に基づいて算定すべきである。
実務上の射程
共犯事件における追徴の個別化を示す。分配額が判明している場合は本判例に従い個別額を追徴するが、分配額が不明な場合は、平等の割合で分割するか、あるいは全額について連帯責任(共有関係)を認めるべきかという別論点へと繋がる。答案上は、まず没収・追徴の対象を特定する際に、本判例を根拠に「実質的な利得の帰属」を重視する姿勢を示すのが有益である。
事件番号: 昭和39(あ)1605 / 裁判年月日: 昭和40年2月25日 / 結論: 棄却
変更された大審院判例は、刑訴法第四〇五条第三号の判例に当らないものと解すべきである(昭和二七年(し)第一六号、同年八月三〇日第二小法廷決定、刑集六巻八号一〇六三頁参照)。