変更された大審院判例は、刑訴法第四〇五条第三号の判例に当らないものと解すべきである(昭和二七年(し)第一六号、同年八月三〇日第二小法廷決定、刑集六巻八号一〇六三頁参照)。
変更された大審院判例は刑訴法第四〇五条第三号の判例に当るか。
刑訴法405条3号
判旨
数人が共同して賄賂を収受した場合における追徴額の算定は、共犯者間での平等の分割によるべきではなく、各自が実際に分配を受け費消した額に応じてなされるべきである。
問題の所在(論点)
数人が共同して収賄罪を犯した場合における刑法197条の5後段の追徴額の算定基準について、共犯者間で平等に分割すべきか、あるいは実際の分配額(費消額)に応じるべきか。
規範
刑法197条の5後段に基づく追徴において、数人の共犯者が共同して賄賂を収受した場合、追徴は収賄の共犯者各自の実際の分配額(費消額)に応じて行うべきである。かつての大審院判例が示した「共犯者の分配額にかかわらず平等に分割して追徴すべき」との見解は、大正11年の連合部判決により既に変更されており、現在は「各自分配額に応じた追徴」が判断枠組みとなる。
重要事実
被告人AおよびFは、その職務に関して共謀の上、現金150万円の賄賂を収受した。原審は、証拠に基づき、この150万円のうち被告人Aが35万円を、被告人Fが残りの115万円をそれぞれ費消したと認定した。これに基づき、原審はAに対して35万円、Fに対して115万円の追徴を宣告した。これに対し被告人側は、共犯者間で平等に追徴すべきとする過去の判例に違反するとして上告した。
あてはめ
本件において、原審は被告人AおよびFの検察官に対する供述調書などの証拠に基づき、収受した150万円のうちAが35万円、Fが115万円を費消したという事実を認定している。この認定は適法な証拠に基づくものであり、誤りはない。追徴の趣旨は不正な利益を剥奪することにあるため、実際に利得した額に基づいて算定するのが相当である。したがって、各自の費消額に応じて追徴額を決定した原審の判断は、現在の判例の趣旨(各自分配額に応じた追徴)に適合している。
結論
収賄の共犯者に対する追徴は各自の分配額に応じて行うべきであり、各人の費消額に基づき異なる額を追徴した原判決に違法はない。
実務上の射程
共犯事件における追徴の個別化。実務上、没収不能による追徴を課す際は、利得の分配実態を証拠に基づき特定する必要がある。答案上では、共犯者全員に対して連帯して全額を追徴するのではなく、個別の利得額を基準とすべきであることを示す際の根拠となる。
事件番号: 平成13(あ)25 / 裁判年月日: 平成16年11月8日 / 結論: 棄却
1 収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂については,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条ノ5の規定により,共犯者各自に対し,公務員の身分の有無にかかわらず,それぞれその価額全部の追徴を命じることができるし,また,収賄犯人等に不正な利益の保有を許さないという要請が満たされる限りにおいて,相当と認められ…