1 収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂については,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条ノ5の規定により,共犯者各自に対し,公務員の身分の有無にかかわらず,それぞれその価額全部の追徴を命じることができるし,また,収賄犯人等に不正な利益の保有を許さないという要請が満たされる限りにおいて,相当と認められる場合には,裁量により,各自にそれぞれ一部の額の追徴を命じ,あるいは一部の者にのみ追徴を科することも許される。 2 収賄の共同正犯者2名が共同して収受した賄賂について,両名が共同被告人となり,両名の間におけるその分配,保有及び費消の状況が不明であるなど判示の事実関係の下においては,賄賂の総額を均分した金額を各被告人から追徴することができる。
1 収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂についての追徴の方法 2 収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂についてその総額を均分した金額を各自から追徴することができるとされた事例
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)60条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)65条1項,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条1項,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)197条ノ5
判旨
共謀して賄賂を収受した共犯者間での分配状況等が不明な場合、賄賂総額を均分した金額を各人から追徴することは相当であり、裁判所は相当と認められる場合には裁量により一部の追徴を命じることができる。
問題の所在(論点)
刑法197条の5(改正前)に基づく必要的追徴において、賄賂を共同収受した共犯者間での分配・保有状況が不明な場合、裁判所はいかなる基準で追徴額を決定すべきか。また、全額ではなく一部の追徴を命じることは許されるか。
規範
1. 共同収受された賄賂の没収・追徴は、収賄犯人に不正な利益の保有を許さず、国庫に帰属させる趣旨である。2. 裁判所は原則として共犯者各自に対し賄賂全額の追徴を命じ得るが、常に全額を命じなければならないものではない。3. 利益の帰属や分配が明らかな場合はその額に応じ、あるいは相当と認められる場合には、裁量により各人に一部の額を命じ、または一部の者にのみ追徴を科すことも許される。
重要事実
被告人A(市長)と被告人B(非公務員の支援者)は共謀の上、Aの職務に関連してゴルフ場開発業者から現金合計1億5000万円を賄賂として受領した。しかし、両被告人間における当該賄賂の分配、保有、および費消の具体的な状況は不明であった。第一審および原審は、総額を均分した各7500万円を各自から追徴すべきものと判断した。
あてはめ
本件では賄賂の分配状況が不明であるため、総額を均分した金額を各自から追徴することには相応の合理性が認められる。また、各被告人に命じた追徴額を合算すれば収受された賄賂の総額に達するため、「収賄犯に不正な利益の保有を許さない」という必要的追徴の趣旨を損なうものでもない。非公務員が含まれる共同正犯であっても、この判断枠組みを異にする理由はない。
結論
共同収受した賄賂の分配状況が不明な場合に、総額を均分した額を各被告人から追徴した原判決の判断は相当である。
実務上の射程
共犯事件における追徴額の算定手法(全額連帯・個別分配・均分)について裁判所の裁量を認めた重要判例である。答案上は、追徴の趣旨(不法利益のはく奪)から説き起こし、分配状況が判明している場合は「実質的な利得額」、不明な場合は「均分」といった基準を、裁判所の裁量として論証する際に活用する。
事件番号: 昭和39(あ)1605 / 裁判年月日: 昭和40年2月25日 / 結論: 棄却
変更された大審院判例は、刑訴法第四〇五条第三号の判例に当らないものと解すべきである(昭和二七年(し)第一六号、同年八月三〇日第二小法廷決定、刑集六巻八号一〇六三頁参照)。