原判決の是認した第一審判決は、その認定した二個の窃盗及び一個の強盗未遂につき所論各本条を適用の上、すべからく刑法七二条の順序に従い先ず後者につき未遂減軽をなし次に前二者と後者とにつき併合罪の加重をなすべきに拘らず、逆に先ず併合罪の加重に未遂減軽をした擬律錯誤の違法及び所論判例違背あるものであること所論のとおりであるが、若し同七二条所定の順序に従い右減軽と加重とをするならば以上三罪についての被告人に対する刑期範囲は第一審判決のそれよりも重くなるから、論旨は結局被告人に不利益な主張となり、この点からも適法な上告理由とならない。
上告理由として被告人に不利益な主張となる一事例 ―擬律錯誤及び判例違背の主張―
刑訴法402条,刑訴法405条3号,刑訴法411条1号
判旨
複数の刑の加減が重なる場合、刑法72条に定められた順序に従って処理すべきであるが、その順序に反する擬律錯誤があっても、正当な順序によれば被告人の刑期範囲が当初より重くなる場合には、被告人に不利益な主張として上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
刑法72条の加減の順序に反する擬律錯誤がある場合、その修正が被告人にとって不利益な結果を招くときであっても、上告理由として認められるか。
規範
刑の加減を併用する場合の順序は、刑法72条に従い、再犯加重、法律上の減軽(未遂減軽等)、併合罪の加重、酌量減軽の順序で行わなければならない。ただし、この順序を誤った違法がある場合でも、正当な順序によって算出される刑期の範囲が、誤った順序による範囲よりも重くなる(被告人に不利益となる)ときは、上告理由として適法性を欠く。
重要事実
被告人は2個の窃盗罪および1個の強盗未遂罪を犯した。第一審判決は、刑法72条の順序に従えば、まず強盗未遂罪について「未遂減軽」をなし、その後に窃盗罪と併合して「併合罪の加重」をなすべきところ、逆に「併合罪の加重」を先に行い、その後に「未遂減軽」を適用するという擬律錯誤を犯した。弁護人はこの法律適用および判例違背の違法を理由に上告した。
あてはめ
本件では、第一審判決が併合罪の加重を先に行い、後に未遂減軽を適用した点は擬律錯誤である。しかし、刑法72条が定める正当な順序(未遂減軽を先に行い、その後に併合罪の加重を行う)に従って計算し直すと、算出される刑期の範囲は、第一審が示した刑期範囲よりも重くなる。この場合、弁護人の主張は結果として被告人に不利益な状態を強いる内容となり、訴訟法上の不利益変更禁止の精神等に照らし、適法な上告理由とはいえない。
結論
被告人にとって刑期範囲が重くなる不利益な主張は適法な上告理由とならないため、上告を棄却する。
実務上の射程
罪数・刑の適用に関する基本判例である。答案上は、刑法72条の適用順序(未・併・酌の順)を示す際に参照するほか、刑事訴訟法における上告理由の適格性(不利益な主張の排斥)を論じる際にも有用である。
事件番号: 昭和29(あ)1156 / 裁判年月日: 昭和29年10月19日 / 結論: 棄却
科刑上の一罪として認定された所為を併合罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとり不利益な主張であつて、上告理由として許されない。
事件番号: 昭和25(あ)2121 / 裁判年月日: 昭和26年3月27日 / 結論: 棄却
所論の点はいずれも、原審において控訴趣意として主張されなかつた事項であり、また刑訴第三九二条二項は同条項所定の事由に関し控訴審に職権調査の義務を課したものではないから、原判決はこれらの点についてなんら判断を示していないのである。従つてこのような事項につき、単純に原判決の法令違反を主張することはもちろん、これを判例違反と…