判旨
裁判所が弁護人の期日変更申請を却下しても、国選弁護人が控訴趣意書に基づき弁論を行い、裁判所がこれに判断を示している限り、弁護権の不法な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
弁護人が提出した期日変更申請を裁判所が却下したことが、憲法が保障する弁護権の行使を不法に制限し、刑事訴訟法上の違反を構成するか。
規範
裁判所による期日変更申請の却下が弁護権の行使を不法に制限したものといえるかは、当該手続において弁護人が控訴趣意に基づく実質的な弁論を行う機会が確保され、かつ裁判所がその主張に対して十分な判断を示しているか否かによって決する。
重要事実
被告人の弁護人は、控訴審において量刑不当を理由とする控訴趣意書を提出した。原審の第二回公判において、国選弁護人がこの控訴趣意書に基づいて弁論を行った。一方で、原審は弁護人が提出した公判期日の変更申請を却下していた。原判決は、提出された控訴趣意について判断を示した上で、被告人の上告を棄却した。
あてはめ
本件では、国選弁護人が選任されており、原審の第二回公判において提出済みの控訴趣意書に基づいた弁論が実施されている。これにより、被告人側の主張を法廷で展開する機会は実質的に保障されていたといえる。また、原判決自体も当該控訴趣意に対して判断を示している。そうであれば、期日変更が認められなかったとしても、防御権の行使に実質的な支障が生じたとは認められない。
結論
原審が弁護人の期日変更申請を却下したことは、弁護権の行使を不法に制限したものとは認められず、訴訟手続に違法はない。
実務上の射程
裁判所の訴訟指揮権と弁護権の調和が問題となる場面で活用できる。弁護人の欠席や期日変更申請があった場合でも、代わりの弁護人(国選等)によって主張の機会が確保され、裁判所が判断を示しているならば、手続の適法性が維持されることを示す判例である。
事件番号: 昭和31(あ)3848 / 裁判年月日: 昭和32年6月19日 / 結論: 棄却
控訴審が被告人から貧困を理由に国選弁護人選任の請求があつたのにその選任を遅延し、控訴趣意書差出最終日を経過した後に至り国選弁護人を選任した場合において、改めて同弁護人に対し控訴趣意書を提出する機会を与える措置をとらなかつたとしても、同弁護人において自ら控訴趣意書を提出するため右最終日の変更方その他格別の請求をすることな…
事件番号: 昭和30(あ)4054 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: 棄却
一 量刑不当を主張している控訴趣意書を提出した私選弁護人が約二ヶ月の余裕を以て通知された第一回公判期日の三日前になつてから病気を理由として、公判期日変更の申請をしても、その病気が既に三ヶ月前に発した乳糜病でなお二ヶ月の安静加療を要するという場合には、右公判期日当日国選弁護人を選任して手続を進めても、特段の異議がない限り…
事件番号: 昭和28(あ)2551 / 裁判年月日: 昭和29年12月18日 / 結論: 棄却
控訴審において公判期日を指定告知した後、弁護人から他の裁判所の公判があるため差支がある旨の証明書を添えてその公判期日の変更申請があつても、右期日は裁判所において弁護人の再三の変更申請を容れて指定したものであり、当該期日には国選弁護人により右私選弁護人提出の控訴趣意書に基き弁論し、その内容も量刑不当および多数の犯罪事実中…