判旨
警察官が犯罪の予防及び制止のために行う警戒活動は、集団示威運動等によって生命・財産等に危害を及ぼす犯罪が発生するおそれがある場合には、根拠となる条例の合憲性を問わず、警察官職務執行法5条等に基づき適法な職務執行となる。
問題の所在(論点)
警察官による犯罪予防のための警戒活動が適法な職務執行といえるための要件。また、根拠となる条例の違憲性が職務執行の適法性に影響を及ぼすか。
規範
犯罪の予防及び制止は警察官の本来の職務権限(警察官職務執行法5条等)に属する。したがって、特定の条例が違憲であるか否かにかかわらず、具体的状況下で犯罪が発生するおそれがある場合には、警察官がその予防等のために警戒の職務を行うことは適法な職務執行にあたる。
重要事実
被告人ら約200名の者が集団示威運動を行っていた。これに対し、警察官らが犯罪の予防等のために警戒の職務(職務執行)を行っていたところ、被告人らがこれに抵抗等し、暴力行為等処罰に関する法律違反等に問われた。被告人側は、前提となる愛知県および名古屋市の各条例が憲法違反であり、それに基づく警察官の職務は適法ではないと主張した。
あてはめ
本件では約200名という多人数による集団示威運動が行われていた。このような規模のデモにおいては、通行人や付近住民の生命、財産等に危害を及ぼす犯罪が発生する具体的・客観的なおそれがある。したがって、警察官がこれに対して警戒活動を行うことは、警察官職務執行法5条に照らし、犯罪の予防・制止という職務権限の範囲内の適法な活動といえる。条例が違憲か否かという点は、この職務執行の適法性を左右しない。
結論
警察官の警戒活動は適法である。したがって、これに対する妨害行為等は公務執行を妨げるものとして処罰の対象となり得る。
実務上の射程
事件番号: 昭和38(あ)1208 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
いやしくも被告人が団体または多衆の威力を示して、刑法第二二二条の脅迫罪を犯した以上、たとえ、その団体または多衆が合法的な集団であつても、なお、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項の適用を免れない(昭和二四年(れ)第一六二二号同二八年六月一七日大法廷判決、刑集七巻六号一二八九頁参照)。
警察官職務執行法5条に基づく「予防」目的の活動の適法性を肯定した。行政警察活動において、根拠法規(条例等)の違憲審査を経ずとも、具体的危険性があれば職務の適法性が認められ得ることを示している。答案上は、職務執行の適法性が争点となる公務執行妨害罪等の検討において、実力行使の前提となる警戒活動の根拠として引用する。
事件番号: 昭和27(あ)4864 / 裁判年月日: 昭和29年6月8日 / 結論: 棄却
昭和二六年四月当時佐賀県a町大字b字c駐在所勤務の巡査に対し同駐在所附近で「売国奴の番犬、A巡査をたたき出せ」と題し、「……たしかに、Aは売国奴の番犬だ!我々愛国者人民は近き将来に必ず勝利するのだ、かかる売国奴とその手先どもの行為は、来るべきあの有名な人民裁判によつて明らかにサバカレ処断されるであろう……」と書いた謄写…
事件番号: 昭和35(あ)397 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二一条に違反しない。 二 刑訴第四〇五条第二号または第三号にいう判例と相反する判断とは、法令の解釈適用について控訴審判決が何らかの判断をした場合においてその法律的判断が判例上の法律的判断と相反する場合をいう。
事件番号: 昭和38(あ)1052 / 裁判年月日: 昭和40年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項ただし書の「暴力の行使」に該当するか否かは、当該行為が社会通念上許容される限度を超えるものであるか否かによって判断される。社会通念上の限度を超えると認められる場合は、刑法上の正当行為(同法35条)としての違法性阻却を認めない。 第1 事案の概要:被告人らの原判示所為(具体的な事案…
事件番号: 昭和39(あ)1000 / 裁判年月日: 昭和40年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃金未払問題に関して説明を求める団体行動であっても、その手段が社会通念上許容される限度を超えた場合には、団体行動権の正当な行使として刑法35条の正当業務行為とは認められない。 第1 事案の概要:被告人らは、勤務先の賃金未払問題に関し、担当のD課長に対して説明を求めた。その際、被告人Cが「一丁もんで…