判旨
死刑の量刑が著しく不当として破棄すべき場合に当たるかは、犯行の動機に同情すべき余地があるとしても、殺害された人数や負傷の程度といった結果の重大性、および被告人の精神状態が正常心理の範囲内であったこと等の犯情を総合して判断される。
問題の所在(論点)
被告人の困窮した生活状況や動機に同情すべき点がある場合において、2名を殺害し1名に重傷を負わせた強盗殺人等の罪に対し死刑に処した量刑が、刑訴法411条2号の「量刑の不当が著しくて、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認めるとき」に該当するか。
規範
第一審の死刑判決を維持した控訴審判決について、刑訴法411条2号に基づき量刑不当を理由に破棄するためには、その判決を維持することが「著しく正義に反する」と認められる必要がある。この判断にあたっては、被告人の境遇や動機といった事情(主観的要素)と、犯行の態様・結果の重大性(客観的要素)を対照し、社会通念上極刑がやむを得ないものといえるかを総合的に考慮する。
重要事実
被告人は、その日の食事にも窮する困窮状態にあり、妻との不和にも直面していた。これらの生活苦は必ずしも被告人の怠惰のみによるものではなく、妻側にも責任の一端があった。被告人は被害者宅へ窃盗目的で侵入したが、結果として2名を殺害し、1名に瀕死の重傷を負わせた。精神鑑定によれば、被告人は分裂性気質の特徴を有し犯行時に感情的興奮はあったものの、精神病的状態にはなく、正常心理の範囲内であったと診断された。
あてはめ
被告人の生活困窮や動機については、必ずしも本人の怠惰のみに起因するものではなく、窃盗を企図した点までは同情の余地がある。しかし、その結果として「貴重な人命を二人殺害し、一人に瀕死の重傷を負わせた」という客観的事実は極めて重大である。また、鑑定結果から被告人の精神状態は「正常心理の範囲内」であり、責任能力を減退させるような異常性は認められない。したがって、動機面の同情要素を考慮しても、犯行結果の重大性と精神状態を照らせば、死刑という量刑が著しく不当であるとはいえない。
結論
本件の死刑の量刑及びこれを是認した原審判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められないため、上告を棄却し死刑を維持する。
実務上の射程
死刑制度の合憲性を前提としつつ、永山基準(最判昭58.7.8)が示される以前の段階において、死刑選択の判断枠組みを示した事例。動機(主観面)に同情すべき点があっても、結果の重大性(客観面)や責任能力の程度によって極刑が正当化され得るという実務上の判断手法を確認できる。
事件番号: 昭和50(あ)189 / 裁判年月日: 昭和53年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の動機、態様、残虐性、結果の重大性、社会的影響等の諸般の事情を慎重に考慮し、その刑責が極めて重大であると認められる場合には、死刑を選択することもやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、一人暮らしの老人等を短期間に連続して襲撃した。犯行内容は、1件の強盗、1件の強盗未遂…
事件番号: 平成21(あ)2078 / 裁判年月日: 平成24年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しない。死刑の適用については、殺害自体が計画的でないことや自首・反省等の事情を考慮しても、犯行の残虐性、結果の重大性、前科等の事情に照らし、刑事責任が極めて重大な場合には是認される。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、路上で留学生からバッグを強奪し…