大阪市値条例第六八号第二条第二項は憲法第一一条に違反するとの主張はその前提を欠き採用できない。また売春は人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであるから、売春が行われないようにすることは正当なことであり、そのために、売春を助長する行為を刑罰を以て禁止することは、結局人の尊厳を保ち、性道徳を維持し、社会を健全ならしめるために必要なことであつて、公共の福祉に適うものというべきである。
大阪市条例第六八号第二条第二項と憲法第一一条。
憲法11条,大阪市条例第68号2条2項,売春防止法1条
判旨
売春を助長する行為を刑罰をもって禁止することは、人の尊厳を保ち、性道徳を維持し、社会を健全ならしめるために必要であり、憲法11条および公共の福祉の観点から合憲である。
問題の所在(論点)
売春および売春を助長する行為を刑罰をもって禁止することが、基本的人権の享受を保障する憲法11条に抵触しないか、すなわち「公共の福祉」による制限として許容されるかが争点となった。
規範
特定の行為を刑罰を以て禁止することが公共の福祉に適うか否かは、当該行為の禁止が、個人の尊厳の保持、道徳の維持、および健全な社会秩序の実現のために必要かつ正当な目的を有しているかという観点から判断される。
重要事実
被告人は、売春を助長する行為を禁止し罰則を設けている大阪市条例(昭和26年大阪市条例第68号2条2項)に違反したとして起訴された。弁護人は、現代日本において売春行為には罰すべき性質(当罰性)がなく、これを禁止することは憲法11条に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和31(あ)4289 / 裁判年月日: 昭和37年5月30日 / 結論: 棄却
一 憲法三一条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべきで、このことは憲法七三条六号但書によつても明らかである。 二 地方自治法第一四条第五項およびこれに基づく昭和二五年大阪市条例第六八号「街路等における売春勧誘…
あてはめ
売春は、人としての尊厳を著しく害し、性道徳に反するとともに、社会の善良の風俗を乱すものである。したがって、売春が行われないようにすることは正当な目的であるといえる。これに基づき、売春を直接または間接に助長する行為を刑罰によって禁止することは、結局のところ、人の尊厳を保ち、性道徳を維持し、社会を健全ならしめるために不可欠な手段であると評価できる。
結論
売春助長行為の禁止は公共の福祉に適う正当な制限であり、憲法11条に違反しない。
実務上の射程
人権の制限が「公共の福祉」に基づき正当化される根拠として、「個人の尊厳」や「社会道徳」を強調した初期の判例である。現代の答案作成においては、単に「性道徳」という抽象的概念だけでなく、性的自律権の保護や搾取の防止といった具体的利益に引き付けて論証する際の基礎的な考え方として利用できる。
事件番号: 平成1(あ)511 / 裁判年月日: 平成4年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】軽犯罪法1条33号及び大阪市屋外広告物条例の規定は、憲法21条および31条に違反せず、表現の自由の不当な制限には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、軽犯罪法1条33号前段(他人の工作物にみだりに広告物等をはりつけた罪)および大阪市屋外広告物条例(許可を受けずに広告物を掲出する等の罪)に違反す…
事件番号: 令和6(あ)504 / 裁判年月日: 令和7年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方自治体の条例による盗撮行為の処罰規定は、軽犯罪法1条23号と対象行為が重複しても、目的が異なり同法の目的・効果を阻害しない限り、憲法94条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、大阪府迷惑防止条例に基づき、住居、浴場、便所等の場所で衣服を着けない状態にある人の姿態を撮影したとして起訴された…
事件番号: 昭和41(あ)536 / 裁判年月日: 昭和43年12月18日 / 結論: 棄却
昭和三一年大阪市条例第三九号大阪市屋外広告物条例第一三条第一号、第四条第二項第一号、第三項第一号は、憲法第二一条に違反しない。