一 憲法三一条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべきで、このことは憲法七三条六号但書によつても明らかである。 二 地方自治法第一四条第五項およびこれに基づく昭和二五年大阪市条例第六八号「街路等における売春勧誘行為等の取締条例」第二条第一項は、憲法第三一条に違反しない。
一 憲法第三一条の趣旨―刑罰はすべて法律そのもので定めなければならないか 二 地方自治法第一四条第五項およびこれに基づく昭和二五年大阪市条例第六八号第二条第一項の合憲性
憲法31条,憲法73条6号,憲法94条,地方自治法2条2項,地方自治法2条3項1号,地方自治法14条1項,地方自治法14条5項,昭和25年大阪市条例68号,昭和25年大阪市条例2条1項,売春防止法附則4項,売春防止法附則5項
判旨
憲法31条は罰則の委任を禁止していないが、白紙委任は許されない。条例は公選議員から成る議会の議決による自治立法であるため、法律の授権が「相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りる」と判示し、地方自治法14条5項の授権に基づく罰則規定を合憲とした。
問題の所在(論点)
法律が条例に対して罰則の制定を委任する場合、どの程度の具体性が求められるか。地方自治法による罰則制定の一般的授権が、憲法31条にいう「法律の定める手続」に適合するか。
規範
憲法31条が定める罪刑法定主義は、刑罰が法律そのもので定められることを原則とするが、法律の授権により下位法令で定めることも許容する。ただし、一般的・白紙的な委任は許されない。もっとも、条例は住民が選出した議員で構成される議会の議決を経て制定される「自治立法」であり、行政府の命令とは性質を異にする。したがって、条例に罰則を委任する場合、法律による授権は「相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りる」と解する。
重要事実
事件番号: 昭和31(あ)1826 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
大阪市値条例第六八号第二条第二項は憲法第一一条に違反するとの主張はその前提を欠き採用できない。また売春は人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであるから、売春が行われないようにすることは正当なことであり、そのために、売春を助長する行為を刑罰を以て禁止することは、結局人の尊厳を保ち、性道徳を維持…
被告人は、大阪市条例「街路等における売春勧誘行為等の取締条例」2条1項(売春目的のつきまとい等の禁止、5000円以下の罰金または拘留)に違反したとして起訴された。被告人側は、同条例の根拠となる地方自治法14条1項・5項(現14条3項)が、刑罰の対象となる事項を特定せず不当に広範な授権を行っているものであり、憲法31条(罪刑法定主義)に違反すると主張した。
あてはめ
地方自治法2条は、保健衛生や風俗純化(3項7号)、住民の安全・健康保持(同1号)など、条例の対象事項を相当に具体的に例示している。また、同法14条5項は、条例で科し得る刑罰の種類と範囲を明確に限定している。条例は民主的基盤を持つ自治立法であることを考慮すれば、これらの規定は、処罰対象と刑罰の双方が相当程度に具体化・限定された授権といえる。したがって、本件条例は白紙委任には当たらない。
結論
地方自治法による条例への罰則委任、およびこれに基づく本件条例は、憲法31条に違反しない。
実務上の射程
条例による人権制限の根拠を問う問題(憲法31条、94条)で必須の判例である。委任の程度について、政令(憲法73条6号但書)には「個別具体的委任」が求められる一方、条例には「相当な程度の具体性・限定性」で足りるとする二段階の基準を明確に示す際に用いる。答案では「自治立法」としての民主的正当性を根拠に、緩和された委任基準を導く論理が重要となる。
事件番号: 平成1(あ)511 / 裁判年月日: 平成4年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】軽犯罪法1条33号及び大阪市屋外広告物条例の規定は、憲法21条および31条に違反せず、表現の自由の不当な制限には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、軽犯罪法1条33号前段(他人の工作物にみだりに広告物等をはりつけた罪)および大阪市屋外広告物条例(許可を受けずに広告物を掲出する等の罪)に違反す…
事件番号: 昭和62(あ)1273 / 裁判年月日: 昭和63年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】軽犯罪法1条33号前段にいう「みだりに」とは、他人の工作物にはり札をするにつき、社会通念上正当な理由があると認められない場合を指し、憲法31条の適正手続に違反しない。また、屋外広告物条例及び同法に基づきはり札行為を処罰することは、表現の自由を保障する憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告…
事件番号: 昭和41(あ)536 / 裁判年月日: 昭和43年12月18日 / 結論: 棄却
昭和三一年大阪市条例第三九号大阪市屋外広告物条例第一三条第一号、第四条第二項第一号、第三項第一号は、憲法第二一条に違反しない。