判旨
数個の事件の間で量刑に差異が生じても、事件の個別性から直ちに法の下の平等(憲法14条)に反するとはいえず、被告人の社会的地位等の諸情状を考慮した量刑は正当である。
問題の所在(論点)
類似する他の刑事事件と比較して量刑に差異がある場合、それが憲法14条の法の下の平等に違反するか、および公職者としての地位を量刑上の不利益な情状として考慮することが許されるか。
規範
個々の事件には個別性があり、外形的な事実関係が類似する場合であっても情状が同一とは限らない。したがって、数個の事件間で量刑上の差異が生じることのみをもって、直ちに憲法14条の保障する公平(法の下の平等)を欠くものということはできない。
重要事実
被告人は町議会議員という地位にありながら、公職選挙法違反の罪に問われた。第一審判決は、被告人を罰金2万5000円に処したが、公民権の停止までは行わなかった。これに対し被告人側は、類似の別事件と比較して量刑が重く差別的であり、憲法14条や憲法37条1項(公平な裁判所の裁判を受ける権利)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人は町議会議員という地位にあり、率先して公明選挙の実現に協力すべき社会的・道義的責任がある。原判決が、この地位に伴う責任やその他諸般の情状を考慮し、被告人の情状が軽くないと判断したことは、単に個別的な情状を説明したものに過ぎない。記録に照らしても、本件被告人のみが量刑上、特に差別的な取扱いを受けた事実は認められず、憲法違反の前提を欠いている。
結論
量刑に差異があっても直ちに不当とはいえず、憲法14条および37条1項違反には当たらない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑の不当を憲法違反(法の下の平等)の問題にすり替えて主張することを制限する。個別具体的な情状(特に被告人の社会的地位や職責)に基づき量刑に差が生じることは、刑事裁判の個別性の観点から正当化されることを示した。答案上は、量刑判断における裁判所の広範な裁量を裏付ける根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1570 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判における量刑が他の犯人と比較して重いとしても、それは犯人の個性や情状に応じた個別的判断の結果であり、憲法14条の法の下の平等に違反しない。また、憲法37条1項の公平な裁判所とは、構成等に偏頗の恐れがないことを指し、個別の事実誤認や不利益な判断を当然に違憲とするものではない。 第1 事案の概…