屑鉄商である被告人が、製鋼会社の屑鉄納入商の下請商に屑鉄を供給するにあたり、右会社計量場における検収に際し、秤量器に操作して同所検収係員を欺罔して水増秤量させ、その結果を実量と誤信させて検収せしめた以上、右下請商に対する水増秤量分の屑鉄代金騙取の実行の着手があつたものと認められる。
詐欺の実行の着手が認められる事例。
刑法43条,刑法246条,刑法250条
判旨
詐欺罪の実行の着手は、財物の交付を求めるための前提となる欺罔行為を開始した時点をもって認められる。屑鉄商が取引先において計量をごまかす等の欺罔行為に及んだ場合、その時点で詐欺罪の実行の着手があったといえる。
問題の所在(論点)
詐欺罪における実行の着手時期が問題となる。具体的には、交付の前提となる計量段階での欺罔行為をもって、直ちに実行の着手を認めることができるか。
規範
刑法246条の詐欺罪における実行の着手(43条前段)は、法益侵害の現実的危険性が認められる行為、すなわち交付の判断の基礎となる重要な事項について相手方を誤信させる欺罔行為を開始したときに認められる。
重要事実
屑鉄商である被告人は、取引関係にある株式会社A製鋼所の計量場において、判示のような欺罔行為(具体的内容は判決文からは不明だが、取引価格を不当に高めるための計量操作等と解される)を行った。弁護側は、当該行為時点ではまだ実行の着手がないと主張して上告した。
事件番号: 昭和28(あ)4601 / 裁判年月日: 昭和30年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員の交付を目的とする詐欺罪において、代金支払場所から離れた工場等の現場で量目を仮装するなどの欺罔行為を開始した時点であっても、それが支払担当者に対する一連の欺罔行為の端緒となるものであれば、実行の着手が認められる。 第1 事案の概要:被告人の共犯者Aは、B製鋼所の指定業者であるC物産の代行商人と…
あてはめ
被告人は屑鉄商として取引上の立場を利用し、取引先である製鋼所の計量場という、代金算定の直接の基礎となる場所において欺罔行為に及んでいる。このような欺罔行為は、相手方に錯誤を生じさせ、それに基づき財物を交付させる行為に直接つながる密接な行為である。したがって、計量場での欺罔行為を開始した時点で、財物交付という法益侵害の現実的危険性が惹起されたといえる。
結論
被告人が計量場において欺罔行為に出た以上、詐欺罪の実行の着手があったものというべきである。したがって、被告人の行為には詐欺罪(未遂を含む)が成立する。
実務上の射程
本判決は、詐欺罪の着手時期について「欺罔行為の開始」を基準とする原則を再確認したものである。計量詐欺のようなケースでは、実際に金銭を請求する前段階であっても、その算定根拠を偽る行為を開始した時点で着手が認められることを示しており、答案上は実行の着手を早めに認める論拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1715 / 裁判年月日: 昭和26年5月8日 / 結論: 棄却
一 原審の認定した事実によれば、本件詐欺は俗にモミと称する詐欺賭博によるものであつて、見物人には一の数字を書いた紙玉を落し入れると称して金を賭けさせ、金を賭けたものが一の数字のある紙玉を拾い上げたときは賭金の三倍相当の金をやり、もし他の数字のある紙を拾うたときはその賭金は胴元の所得とするという方法であり、被告人において…