被告人の上告趣意は、第一、二審裁判所は、憲法、判例に反し被告人の強要された自白に基き、しかも、補強証拠なく自白だけで被告人の生年月日が昭和一〇年一二月一四日であるのを成年者と認定し、従つて、少年法に従わない控訴手続違反があるというに帰する。しかし、被告人の生年月日が第一、二審裁判所が認定したとおり昭和七年一二月一四日であることは、本件第一審記録中の指紋照合回答票で明らかであつて、従つて被告人の自白だけで認定したものでないこと明白であるから所論違憲の主張は、その前提を欠く。
被告人の生年月日を自白だけで認定したという違憲の主張が、その前提を欠く事例
憲法38条3項,刑訴法405条,刑訴法319条2項,少年法2条
判旨
被告人の生年月日(年齢)の認定は、被告人の自白のみによって行うことは許されず、客観的な証拠に基づく必要があるが、指紋照合回答票等の資料が存在する場合には補強証拠があるものとして適法に認定し得る。
問題の所在(論点)
被告人の年齢(生年月日)を認定するにあたり、被告人の自白以外に補強証拠が必要か。また、指紋照合回答票は補強証拠となり得るか。
規範
刑事訴訟法319条2項は、自白のみによる有罪判決を禁止している。被告人の年齢等の身分に関する事項であっても、それが刑罰権の存否や適用法条(少年法の適用の有無等)に直結する重要事実である場合には、自白のみで認定することは許されず、補強証拠を要する。
重要事実
被告人は、自らの生年月日が昭和10年12月14日であり、犯行当時少年であったと主張して、少年法に従わない訴訟手続は違法であると訴えた。第一審および第二審裁判所は、被告人の生年月日を昭和7年12月14日(成年者)と認定したが、被告人はこれが強要された自白に基づき、かつ補強証拠がないものであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、第一審および第二審裁判所が被告人の生年月日を昭和7年12月14日と認定した根拠は、被告人の自白のみではない。記録上、指紋照合回答票という客観的な資料が存在しており、これにより被告人の生年月日が裏付けられている。したがって、自白のみで認定したという事実関係は認められず、憲法および判例に違反する手続上の瑕疵はないといえる。
結論
被告人の生年月日の認定には指紋照合回答票という補強証拠が存在するため、自白のみによる認定とはいえず、少年法を適用しなかった手続は適法である。
実務上の射程
実務上、被告人の年齢が少年法の適用の有無に関わる重要事実である場合、自白だけでなく戸籍謄本や指紋照合回答票等の客観的資料との照合が必要であることを示唆している。証拠法上の補強法則の射程が、犯罪事実そのものだけでなく、刑罰権の前提となる重要事実にも及ぶことを意識した答案構成に有用である。
事件番号: 昭和28(あ)4085 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外にこれを補強する証拠が存し、それらを総合して事実認定が可能であるならば、憲法及び刑事訴訟法の定める自白の補強法則に反しない。 第1 事案の概要:被告人が犯行について自白していた事案において、第一審及び原審は、当該自白のほかにこれを補強する証拠を事実認定の資料として採用した。弁護人は…
事件番号: 昭和25(さ)30 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
所論窃盗被告事件の確定判決は裁判時において既に成年に達していた被告人に対し少年法を適用したことにはなるがそれは同裁判所が前記のように被告人が生年月日を偽つていたために被告人が成年であつたにかかわらずこれを少年と誤認したことに基因するのである。而して非常上告は抽象的に法規適用の誤を正すことを目的とするものであつて個々の裁…